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2017年10月24日火曜日

感覚的と論理的の間をつなぐ思考:日本の家展

日本の家がテーマになった展示会を見に行きました。住宅建築は個人的に好きで、名建築が総結集していることもあり、とても面白い内容でした。おススメですので、間に合う人はぜひ足を運んでみてください。ですが、ここではストラテジー的に、展示会の構成側の視点に立って、どうやってこの大きなテーマを企画しようとしたかについて、考察してみようと思います。



日本の家 1945年以降の建築と暮らし
東京国立近代美術館
2017 07.19~10.29

本展示会では戦後から現在までの家を13のキーワードで分類して紹介していますが、どうしてこの13になったのかが気になりました。僕は少し建築に関わっていたこともあるので(住宅設計のアルバイトを一年やっていました)、この分類が何となくツボを抑えているのだろうと、感覚的には腑に落ちます。ですが、整理して考え直してみようと思うと、それぞれの位置関係はどういうことかがよくわかりません。つまり論理的な分類にはなっていない、時系列とのながれで位置づけされてはいますが、必ずしもその時代の特徴というわけでもなさそうです。

1.日本的なるもの
2.プロトタイプと大量生産
3.土のようなコンクリート
4.住宅は芸術である
5.閉鎖から開放へ
6.遊戯性
7.新しい土着・暮らしのエコロジー
8.家族を批評する
9.脱市場経済
10.さまざまな軽さ
11.感覚的な空間
12.町屋:まちをつくる家
13.すき間の再構築

このような状況はよく理解できます。というのは、僕自身がこういった整理の仕方(キーワードを5-10にするまとめ)を好んで使うからです。理由は上にあげたように、あるリサーチから得られた気づきを伝えるためには、論理的に整理することで、本来もつ深い意味が抜け落ちてしまうことがあるので、そういったときはストーリー性やメッセージ性のあるワーディングによって共感を得るアプローチを試みます。



ですが、その論理的な構造を見せないと、やっぱり共通感覚を持っていない多くの人には通じないということも、よく経験しています。そこで無理やり自分なりに俯瞰して捉えて整理してみました。僕の中では、13の特徴は大きく2つの軸を見出しました。

軸1:合理的 ⇔ 個性的
軸2:開放的 ⇔ 閉鎖的

この4つで考えると時系列との関係性が整理できそうです。軸1は時代によって行ったり来たりしているけど、軸2は1980年前後で閉鎖的から開放的に大きな変化として移行しています。でも内向きになっている近年では、もう一度閉鎖的なムードが来る可能性も考えられます。下のようにその時代の特徴と変化ポイントをまとめてみました。

1945年:戦後復興で伝統的な日本に新しい思想が浸透(開放的)
1960年:高度成長に伴う効率化や経済性が主役(合理的)
1970年:成長の反発としての表現が台頭(個性的・閉鎖的)
1985年:経済が豊かになり余裕や多様性が表れだした(開放的)
1995年:過剰な表現を見直しミニマムや軽さが注目(合理的)
2000年~:力の抜けた感じだけど思想が強く出てくる(個性的)

そもそもこの展示会は美術館で行われた企画だから、論理的にまとめる必要はないので、13のカテゴリーを並列的に扱うことで成立しますが、これがもし仕事での場面(違う視点でこの企画に関わる人がいる場)だと、論理性を加える必要があるのかなと思います。こういった感覚的と論理的の使い分けとつなぎをすることができるようになれると、デザインストラテジーとしての活躍の場が増えるのでは、と考えながら思考してみました。



ところでこの展示会の一番の目玉は、僕が通っていた学校の初代校長であり建築家の、清家清が設計した『斎藤助教授の家』が実物大で再現されていることです。原寸大で雪見窓の心地よさや、移動畳の使われ方、部屋と部屋の距離感などが体感できます。素晴らしい!

あと個人的には、建築家の家だけでなく、ハウスメーカー・集合住宅・リノベーションの流れなども含めて、日本全体の家を見ることができると、より深い気づきが得られそうだなと思いました。誰か企画してもらいたいです。