ものをつくるという行為は何なのか?:WIRED vol.28 Making Things

公開日: 2017年6月15日木曜日 クリエイティブ ソーシャル テクノロジー

今回は雑誌です。ちょっと前まではあまり雑誌は読まない方だったけれど、今年になってから食に興味を持ち始めたとき、すでにイケてる雑誌はそれを先取って取り上げていたことに気づき、いまを知るために最近また雑誌に目を通すようにしています。で、今回はアート・テクノロジー・社会などを毎回エッジのある切り口で発信しているWIREDです。





WIRED vol.28
Making Things ものづくりの未来 (2017.06.10)

ものづくりとは何かを問い直すのが本号の特集で、個人的にとても気になるテーマです。僕はもともとプロダクトデザインをやっていましたが、ものづくりだけのアプローチに難しさを感じて、ものではない領域に関心をシフトしていきました。一方で個人としてはものづくりは好きなので、プライベートではDIYで家具をつくったりしますが、ものづくりでビジネスとプライベートの間に接点が見出せないのが悩みです。

特集の冒頭に編集長の記事がありますが、『ものづくりとは本来、生産でもあり消費でもある、変な作業』というような一文が印象的でした。この記事では音を奏でることを例に挙げていましたが、物理的なものづくり(食事・家・工芸品など)であっても、つくる人と使う人とで生産と消費の関わりは循環し、社会や文化が形成されていると捉えることができます。一方で近代以降の産業は実利や機能ばかりを優先していたため、消費→生産に結びつかないため、深く考えずにたくさんつくり、モノが溢れかえってしまい環境問題にもつながり、負のイメージが強くなってしまっています。

僕はそこで、ものづくりとは違うことを考えましたが、fuseprojecを立ち上げたIves Beharは、プロダクトで社会への問いを提示するとともに、デザインでその考えを具現化しています。問いに対して考えや議論が生まれることで、その製品の使い方やあり方を捉え直したり社会への働きかけにもつながります。PumaのClever Little Bagは環境問題に向き合いながらそれをビジネスとして具現化して、かつユーザーが共感した(このデザインは見た目だけでないカッコいいスタイルがある)という、すごい良い事例だと思います。前にスペキュラティブデザインに書いたことにも通じますが、問題提起だけでなく解決までつなげているというのがすごい点です。こういったことを世に出していってるデザインはまだ決して多くはないと思うので、尊敬します。

フランスのスタートアップにみる考察も興味深かったです。『これまでのメイカーズ・ムーブメントには技術偏重で人文学(哲学や文学など)が足りなかっった、これから必要なのは思想だ』ということが書かれていました。技術そのものは必ずしも人を幸せにする訳ではないから、その技術をどう使うかがが問われます。極端にいうと、武器に使うのか平和に使うのか。いま多くのものは『これあったら便利じゃん』といった自己的な視点が強くつくられている気がしますが、それが人と社会に何をもたらすのか、といったことまでを問い直すことが本来必要なのだと思います。



冒頭の話に返ると、ものづくりとは生産でもあり消費でもある、そこには人が生きていく上で、どんな文化や社会を育んでいくか、という創造的な行為でもあり、思索的な営みでもあるといえます。だから、ものづくりの行為自体は胸を張ってとりくむべきだけど、そこには社会レベルでも個人レベルでもいいけど、考えをもって創ることが今後より強く問われていくのだと思います。

うーん、ここまで深く考えさせてくれるとは、WIRED恐るべしです。次号の特集は何がくるのか、目が離せません。
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