安易にビジュアル化しない:「価値」が伝わるしくみのつくり方

公開日: 2017年1月4日水曜日 デザイン メソッド

本書のサブタイトルに書かれている「サービスデザイン」という言葉は、割と最近よく聞かれるようになってきましたが、サービ スデザインとはこうだという本はまだそれほど多くないと思います。自分自身がサービスデザインとはこうだ、という説明がまだうまくできないので気になって 読んでみました。



「価値」が伝わるしくみのつくり方 顧客に魅力あるストーリーを提案するサービスデザイン
新城健一 U-CAN
2013年5月

本書はおおまかにこんな構成になっています

・サービスとは何か
・手順把握からビジョンの設定
・流れと枠を決めてゴールから逆算する
・モノがたりとつくり具現化していく

この本は全体を通してやさしい言葉で書かれているので、納得しながら読み続けることができました。はじめに、サービスとは「企業が顧客と結び付くためのしくみ」と定義しています。シンプルで分かりやすいです。で、そのあとの図表に「顧客は意味もなく企業とは結び付きたくはない」と書いてあって、これはすごく共感できました。ありがちな悪い例として「これとそれとあれを組み込めば絶対にユーザーは使う」といったような企業側の価値観の押し付けるような企画があったりしますが、そういうのがうまくいかない理由がスッキリできたような気がします。

本の構成は最初にビジョンという章でサービスとは何か?を説明しており、2〜5章で実践の方法が書かれています。各章のなかではツール(意味合いとしてはフレームワークが近いです)を紹介しているのですが、図で整理するというより言葉をまとめていく方法のようです。ストーリーで伝えることが大事といっていることもあり、全体を通してもほとんどがお話しで語られています。色や形をつくるところから取り組んできた僕のようなデザイナーには、ツールというと、ついついビジュアル的な魅力やパッと見で分かりやすいものをつくってしまいたくなるのですが、そういった要素が全然ないのにちょっと馴染みなさを感じつつも、一方で安易にビジュアル表現に頼るのではなく徹底して言語と概念で考えていくことで、見えてくることってあるのかな、と思いました。

具体的な取り組みの例として「シイタケのみ食わず嫌いな十五歳の娘にシイタケに対する苦手意識を減らす」をテーマに紹介しています。確かにこういったサービスを考える場合、家庭の中で親がいちいちビジュアル表現したりはしないはずなので、従来のデザイナーが培ってきた可視化のスキルや思考が時として邪魔することがあるのかもしれないです。よくデザイナー以外の人とアイデアを共有しあうと「デザイナーは絵が魅力的だから、それに引きずられて評価が偏る」ということを言われるのですが、そんな状況と共通点があるような気がするので、視覚化に頼らない伝達方法はもっと考えてみたいなと思いました。(一方で概念を可視化して魅力的に伝えられるのはデザイナ−の強力で大事なスキルでもあります)


本のなかで出てくるいくつかの説明は、他の本や別の人の話に登場してきたり考えが共通するものが見られました。例えば製品やサービスの普及曲線(はじめは思ったより普及しないから早すぎる誤解があり、普及すると一気に伸びるので気づいたときにはもう手遅れ)は他の本でも見て、そのときはあまり気に留めなかったけれど、別の場でもう一回出てきたので、すごく記憶に残りました。内容とはちょっとそれますが、英語の勉強をしたとき、単語をひたすら頑張っても大して頭に入らなかったけど、別の機会に登場したときに「ああ、あれだ」ってなって記憶に定着するのと同じ感覚です。きっと自分の中に2つの意味付けとかストーリーを勝手につくっているのだろうと思います。こういったやり方が学習方法に活用されると面白そうですね。

「価値」が伝わるしくみのつくり方
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