机上の空論でおわらない戦略フレームワークの使い方:三枝匡の経営三部作

公開日: 2017年9月25日月曜日 ビジネス マーケティング

前回のザ・会社改造の本を読んで、素直に三枝さんの取組みに感化されてしまったので、熱が冷めないうちにこれまでの三部作をまとめて読み直して、加えて対談本も一冊読んでみることにしました。特に三部作はそれぞれすべてが名著とされているので、まとめてとりあげるのは失礼な気もしますが、通して読むことによって気づくこともあったかと思います。




戦略プロフェッショナル
三枝匡
ダイヤモンド社 1991.03

経営パワーの危機
三枝匡
日本経済新聞社 1994.09

V字回復の経営
三枝匡
日本経済新聞社 2001.09

「日本の経営」を創る
伊丹敬之 三枝匡
日本経済新聞社 2008.11

三部作を読み返してみると、ザ・会社改造のお話しはこれまでの3つを集約したかのような内容だったことが分かります。(なのに要所要所でなるほど!とか思っていた僕は、頭に入っていなかったのか、自分事化して読めていなかったか、いずれにしてもダメパターンだったということも分かりました)最初の執筆が1991年なので、実際に活動していたのはまだ80年代の頃、最新作は2000年代から10年近くにわたって取り組んできたものなので、25年くらいの間があっても、基本的な思考は変わらずに通用しつづけていることが驚きでもあり、本質的であることを教えてくれます。

1作目の『戦略プロフェッショナル』は医療機器メーカーを題材に取り上げています。選択と集中によって戦略を絞り込んでいくことの大切さと難しさがよく伝わるお話しです。本の中ではPPM分析による製品販売が勝ちパターンを歩んでいくための流れと施策と、顧客セグメントをマトリクスで整理して営業をかける順番を決めていく、というフレームワークの有用性が紹介されています。読むとそうだよな~と思うのですが、実際の仕事では(自分が関わっているものでも)これができていない例はたくさんあるのを考えると、見よう見まねでもいいから、まずはフレームワークを使って状況をしっかりと把握する必要性を感じます。ザ・会社改造でも、まずは現実をしっかりと直視することの大切さを主張しています。

2作目の『経営パワーの危機 』はドラマチックなストーリーで、子会社に乗り込んで改革をしながらも身内の造反や長く抜け出せない停滞があったり、うまくいったと思ったら天狗になって間違いをしそうになるなど、小説としても十分に面白いお話です。この本では特に3x3のマトリクスを使って自社と競合との位置づけを比較して戦略を立てるところが個人的には見どころでした。この本を読んでからかその前からかはわからないけど、僕も3x3は割と好んで使います。ハッキリしている事象のものは2x2で整理できるけど、あいまいだったりどちらともいえないような要素があるときに3x3は考えを整理しやすいです。

3作目の『V字回復の経営』は後に公認のネタバレがされていますが、コマツの事業再建に関わったお話しのようです。この時期に後のイノベーションの代表例として取り上げられるKOMTRAXの取組みが着手されていたかどうかはわかりませんが、この本ではタイトル通り、V字回復をするための社内プロセスが各章毎にまとまっています。また、改革をしようとするときに反応する人のタイプを推進型から抵抗型に分けて傾向と対策をまとめているのが面白かったです。これから何か新しい取組みをするときに、その人がどの位置づけかを読み解くのは楽しそうです。(あるいは自分を見るときに)

最後の本、「日本の経営」を創る は経済学者との対談ですが、著者のいままでの実績や本の内容を例にレビューをしてみるといったような内容です。やはり学者と経営者では重点が少し違って、学者は個別の事例に偏らずに体系化された客観的な定理を重視しますが、経営者は現場視点でこれが大事だ!という熱い想いの主観要素が強い、という差があるようです。どちらがいい悪いではなく、状況によって両者の視点をうまく使い分けられるといいんだろうなと思いました。



というように4冊を振り返ってみると、その多くが新しい著作のザ・会社改造に集約されているではありませんか。なので、やはり読み方としては、時系列的に最初の3部作を読んでから、ザ・会社改造で全体をおさらいしつつ点を線につなげて理解するのがよいと思います。ただ、この手の本は熱い気持ちになりつつも、読んで賢くなった気になってしまう勘違いをしがちになるので、いやいや自分は何もやってないんだぞ、とツッコミをいれながら客観的に読むことをお勧めします。手法はあくまでも手段、理論よりも実践や情熱が大事、瞬発力や切れ口の鋭さなど現場で役立つスキルに落とし込めるよう、読んだらすぐに実務で使ってみることをこころがけておく必要がありそうです。
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