編集する建築家-OMA側:行動主義 レム・コールハースドキュメント

公開日: 2017年4月12日水曜日 クリエイティブ ソーシャル デザイン ヒト 建築

今回は建築界では有名なレム・コールハースです。建築家のストラテジー視点に目を向けてみたきっかけは、ある知人から「デザインストラテジーといった考えは建築業界ではもっと前から取り組まれていたと思う」と教えていただいたことがきっかけです。

その中でもレム・コールハースは、対象領域を建築に限らない活動をしており、興味の対象でした。彼はOMAとAMOの2つの会社を運営していますが、2回に分けて、まずはOMA・建築の取組みから整理していきたいと思います。



行動主義 レム・コールハースドキュメント
瀧口範子
TOTO出版 2004.03


僕は学生時代に建築事務所でアルバイトをしていたこともあって(お世話になりました!)、割と建築分野への関心は高い方だと思っていますが、実はレム・コールハースのことは名前くらいで、ほとんど知りませんでした。日本にOMAの手がけた建物があまりないことも1つあるけれど、それよりも、建築のスタイルや見どころが『分かりにくい』というのが主な理由です。この本の前に彼自身が執筆した本を読んではみたけれど、読めば読むほど???が重なる難解な内容でした。

それに比べると、この本はジャーナリストが彼の行動を紹介する内容なので、とても分かりやすいです。彼が語る言葉そのものよりも、行動を通じて何が組織としての戦略性につながっているかが、本書全体を通して感じ取ることができます。印象的だったことを3つまとめます。

1.質問をする

コールハースはスタッフや関係者にとにかく質問するそうです。指示や命令ではないことによって周りは自律的に進み、さらにその質問が意味する問題に魅了されることで連鎖反応がおこるようにしているのだとか。これは、新しいものや不確実性の高い取組みにおいては、そもそも正しい答えはないのだから、有機的な組織体制として面白い視点だなと思いました。

2.ブックレットにする


OMAはプレゼンを行うときブックレットにする方法をよく取るのだそうです。そこではダイヤグラムもたくさん使われるそうですが、テキストはほとんど入れていないそうです。ダイヤグラムを使うことで分野や国の違う人たちの共通言語になりえるということです。ただ彼らのダイヤグラムはおそらく、空間を記号的に扱い形態に結び付ける方法なのかと思うので、サービスのような物体が存在しない領域についてはまたちょっと違うのかもしれません。

3.社会的・政治的なコンテキストから思考する


建築家は割と詩的なアーティストっぽい傾向が強い人が多い印象がありますが、OMAは現実社会をリアルに見たうえで思想的であるところが特徴的だと思います。その思想そのものについては、本を読んでも正直よくわからなかったのですが、彼らがAMOを設立した理由の1つは『対象への知識があるほどコンテキストにうまく対処できるようになり、より俯瞰的な視点からとらえたり、受け身ではなく意図をもって遂行できるようになるから』ということです。対象を広げて捉えるという見方は、建築に限らずどの分野でも有効だと改めて思いました。



となるほどと思う点は色々とありましたが、まあ全体を読んで、レム・コールハースとう人は『気難しい、面倒な人だなあ』と思いました。ですが1つグッと引き込まれる発言があったので、書きとめておこうと思います。


「ともかく先に機会があるなら、やってみるしかないよ」

理論的と言われる彼ですが、この一言は、目の前のことに全力で取り組むという、クリエイティブな仕事に関わる一人の建築家として、とても魅力的に映りました。正解がなく不確実性が高い分野での取り組みだからこそ、いまある状況に目を背けないことへの大切さというのは、どんな仕事でも一緒だなと。

次はAMO側の取組みについて書きます。


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