異なる2つの専門性を身に着けよう:デザインイノベーションの振り子

公開日: 2017年4月10日月曜日 クリエイティブ デザイン メソッド

日本を代表するデザインファーム・takramが、彼らのデザインに対する考え方をまとめた本です。日本では2000年代に入ってからデザインファームの在り方自体が、それまで個人が注目されていた有名デザイナーから、チームワークで取組むスタイルへと変わってきました。その中でtakramは長く第一線を走り続けているデザインファームですが、その活躍の秘訣を本書から読み解くこともできる内容です。

デザイン・イノベーションの振り子
takram design engineering
LIXIL出版 (2014.09)

●デザインとエンジニアリング

takramが創業した今から10年くらい前は、appleの革新的なモノづくりやUIの世界が広がってきたことによって、デザイナーもこれまでよりもっとモノづくりのプログラミングや製造工程に関与していくことに注目が集まっていました。そういった背景の中でデザインエンジニアリングという領域を横断できる人が出てきましたが、今振り返ってみると、分業化が行き過ぎた反動なのかなとも思えます。もっと前の人たちはデザイナー自身が構造を考えたり写植に手を加えていたのが普通だったので。

●デザインとビジネス

その後、takramはここにビジネス要素を強化してきたようです。デザイナーもエンジニアも開発当事者という意味では同じですが、それを販売・提供していくためには企画部門や経営の視点を組み合わせていく必要があります。この10年で既存の概念を壊す製品やサービスが次々に出てくる中、つくるに加えて伝えることの重要性がより高まってきました。そういった経緯の中から、ビジネスサイドの人材がデザイン組織にも必要になってきたのだと思います。アメリカやヨーロッパのそこそこ大きいデザインファームではビジネス側の人が必ず何人かいるみたいです。

●ストーリーウィービング

と、このような前提を持ったうえで、本書のキモの1つである、モノがたりとモノづくりを振り子の様に行き来する『ストーリーウィービング』について考えてみたいと思います。思考の振り子を振るのは、デザイン⇔エンジニア、デザイン⇔ビジネスと、2つの対極にあるような職能を両方備えていないとなかなか難しいことが分かります。本書ではそれを越境といっていますが、日常の延長上ではなかなかもう1つの専門性を身に着けることは難しそうなので、どこかのタイミングで自分の枠を広げないとです。

1人でできることには限度があるので、色々な専門性を持った人が1つの組織にいること、つまりチームワークの強さがここにあるのではと考えます。裏返すと、インハウスであってもデザインファームであっても、これからは多様性を持った組織であることが不可欠といえます。ただし、その一方でただ集まるだけではなく、一人ひとりが2つの専門性の視点を備えておかないと違う分野を理解することはできないので、人に頼らず自身を磨くことを怠ってはいけないなと思いました。


肝心の内容については、ページ数がそれほど多いわけではないことと(半分は英語版)図とセットで説明されている本のため、本書を読んだり、彼らのプレゼンを聞いた方が正しく理解できると思います。ただそれだけだとあまりにも伝わらないので、気にかかるようなキーワードをいくつか書いておきたいと思います。

・Business+Engineer+Creativity
・越境性と超越性と複眼思考
・Problem Reframingの振り子:Problem⇔Solution
・Storyweavingの振り子:Concrete⇔Abstract
・Prototypingの振り子:Make⇔Think
・目的に応じたプロトタイピング手法がある
・コンセプトとプロダクト、語ることとつくること

気になった人はぜひ本を読んでみてください。
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