すべては実践のための戦略:ザ・会社改造

公開日: 2017年9月24日日曜日 ビジネス

ビジネス系の本です。著者の三枝さんは過去に戦略3部作なる本を出していて、経営とかコンサルティング分野の本では外すことができない名著と言われています。今回そこから15年くらい時間がたって2016年に4部目になる本が出てきました。3部作はもともと知り合い(経理の人)からおススメされて読みました。当時、ビジネス系の本をあまり読んだことがなかったのですが、ストーリー形式で小説のような展開でとても面白くあっという間に読むことができました。今回も同じ形式なので楽しく読むことができました。でも内容は濃いです。



ザ・会社改造
三枝匡
日本経済新聞社 2016.08

今回のお話しは、金型メーカーの受発注を請け負うミスミというユニークな会社で、これも著者が実際に入り込んで社長とし会社を立て直したノンフィクションです。(人の名前ややりとりなどの細かいところはフィクションだけど、公表できる限り実話だということなので、かなりリアリティがあります)僕はこの会社についてビジネスモデルを調べていたときに知ったのですが、ユニークな仕組みはもともと創業者がつくっていたそうです。ただし、当時はビジネスとしてスケールしていくための課題を抱えており、そこで著者の三枝さんがプロ経営者として入っていき、10年を超える改革によって会社の規模や売上を飛躍的に伸ばしていった成功例です。

実務の中で実践してみたいと思った考え方や戦略を3つ(自分の忘備録のために)メモします。まず1つ目は「1枚目・2枚目・3枚目」という整理です。これは企画提案資料のことを意味していて、それぞれの内容は下に書いたとおりですが、ミスミでは1枚目が足りないというとそれが何のことか社員は理解できるのだそうです。提案資料ってわりと自分のスタイルでつくってしまうので何が足りないかが自覚できないことが多いので、この整理は使っていきたいし、周りの人にも浸透していきたい考えです。こういう共通認識が全体で浸透できている組織って強いと思います。

1枚目:現実直視と強烈な反省論
2枚目:改革シナリオと戦略
3枚目:アクションプラン

2つ目はトップとボトムの関係性についてです。ボトムの現場が活発なのを「末端やたら元気」、トップの組織の統制がしっかりとれているのを「戦略的束ね」と表現しています。この2つは火と油のような関係であってお互いによい点はあるけど、それぞれ慢性化したり時間がたつと、ボトムはスケールが小さい活動ばかり増える「チマチマ病」になり、トップは官僚的になるといった状況になります。そうしたときトップ⇔ボトムの注力ポイントを入れ替えることで蔓延した状況を打破することができるという考えです。僕はボトム側の人ですが、活動がチマチマしてないかどうか、自分の状況を見極めるのには分かりやすい整理だと思いました。

3つ目は、ポジションのジャンプと矮小化についてです。仕事をしているとだんだんと責任やポジションが上がってきますが、ポジションが上がっても前の範囲のままで動く人が日本には多いとのことです。そうするとその下の人はより小さな仕事ばかりになり、結果として組織がチマチマするということです。そうならないためには、立場が変わったら1日目から違う目でものごとを見て態度を変える覚悟を持つことと、その前段階で、自分がここにいなくてもいい状態をつくり、次が見据えられる目を持つことが大切になります。1年前と同じことしていないか?ということを常に考えながら先を見ていきたいと思います。



本書は経営の戦略ですが、戦略という意味ではデザインストラテジーとしても参考になることはたくさんありました。特に1枚目の現実直視と強烈な反省論という視点は、デザインに携わっているとどうしても現実をあまく曖昧にみてしまう傾向がありますが、ビジネスではそれじゃあ通じないので、改めていきたいなと思いました。上で書いた三点は今回の本で新たに強調された内容ですが、これまでの三部作にも使われてきた戦略フレームワークの活用例もたくさん紹介されており、これらはもちろん参考になりました。

あと、前に他の本でも書きましたが、戦略は確かに大事だけど、戦略を実行に移せる力の方がもっと大事というようなことが書かれていたので、理論だけの戦略でなく現場視点に落としていけることの大切さを改めて感じました。経営系の本を読んでいると、さも自分が偉くなったかのような錯覚を受けるので、それにはだまされずに、自分の現実をしっかり直視することから始めていきたいと思います。
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