データ分析に計算力は重要でないらしい:会社を変える分析の力

公開日: 2017年10月25日水曜日 リサーチ

主にビジネスマンに向けたデータ分析について書かれている本ですが、内容がとても分かりやすいです。特に理系の人ではなく文系出身の人が、研究ではなくビジネスの実践で活用するために、どうすべきかがまとめられているので、専門外の人にでも入りやすいですし、なかなか骨太なメッセージが含まれている本だと思いました。



会社を変える分析の力
川本薫
講談社 2013.07

上に書いたように、本書はビジネスで活用するためのデータ分析の内容です。なので、始めに研究と実践の違いを説明しています。与えられた問題を解くのは計算力、探索して知識や見解などを得るまでは分析力、ここまでの取り組みは研究の範囲であって、ビジネスの現場では不十分ということです。

ではそれは何かというと、始めに自分で課題を発見してテーマ設定を行うプロセスと、データ分析で得られた情報をビジネスの意思決定にどう寄与させていくかという終わりのプロセスです。どんなに素晴らしい分析でも実社会で活用できなければ、机上の空論にすぎない、というのが著者の主張です。研究の域を超えるために必要なスキルを本書では3つ挙げています。

1.見つける(問題発見力)

解決すべき本当の問題は何だろうか?達成したい姿と現状の間には何がギャップになっているのか?といったことを捉える力です。このスキルを高めるためには、ユーザー視点で考えたり、ビジネス側から発想することを提案されています。この章を読んで、そういえばmonogotoの濱口さんが、発想するためには問題設定の枠(フレームワーク)をどう定めるかが大事だけど、日本人は概して設定の枠が小さすぎる、ということを言っていました。この話と本書で書かれていることには共通点があります。目先の事象に惑わされずにに、根本的な要因を捉えるトレーニングをすることが、データ分析にも役立つというのは意外な気づきでした。

2.解く(分析力)

ここはメインのデータ分析の領域ですが、ビジネス視点で強調していたのは、意思決定に役立つ問題のみを解くこと(目的が正しく設定できていないと優先順位がつけられなくなる)一方的な分析だけでなく現場の声や実態を融合させること、ミスをしないこと(研究だったら間違ってましたで済むけど、ビジネスでは損失は失敗を招く)ということです。まるっとまとめると、データ分析は自分のためでなく会社のために行う、ということなのだと思いました。

3.使わせる(実行力)

これは研究では意識しないスキルです。まず専門家以外の人にちゃんと伝わらなければ意味をなさないですし、「で、どうするの?」に対する提言がなければそこで終わりです。また、その改善策に対する費用対効果が見合ってなければ、分析がどんなに素晴らしくてもビジネスで活用されません。ここまで働きかけて成果を出すことができて、はじめてデータ分析をビジネスに導入することができるといえます。


僕自身もそうですが、リサーチ好きな人はつい自分の興味のみを深堀りして、それがどう役立つかに対して意識が弱い傾向がある気がします。一方で著者のまわりでは、理系よりも文系出身に人の方が優れた成果を出す人がいるとのことで、これは上3つのスキルが高いからだということです。近年ではITの進歩によって計算力のスキルがなくても分析はできるようになりました。なので、より大切なのが「見つける力」「解く力」「使わせる力」だということです。納得です。
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