面白い会社の見方が変わる:異業種に学ぶビジネスモデル

公開日: 2017年11月28日火曜日 ビジネス マーケティング

ビジネスモデル系の本を立て続けに紹介しています。前回は辞書のようなパターン集の本でしたが(今度また日本の辞書的な本を紹介します)、この本はいくつかの事例をベースにユニークなビジネスモデルとそのインパクトを説明しているので、割とカジュアルに楽しく読めると思います。



異業種に学ぶビジネスモデル
山田英夫
日経ビジネス人文庫 2014.11

個人的に面白いと思った事例を3つ紹介します。まず1つ目は楽天バスサービス。楽天の高速バスがユニークなのは、新宿の朝は空いている(地方にバスで行く人は少ない)ことに着目して、そうした人たちをターゲットにしてサービスを展開したこと。サイトで検索上位に来るようにしたりネットの動線に力を入れたこと。予約数に応じてレベニューマネジメント(ホテルが取り入れている価格調整システム)をバス業界に取り入れたこと。混み具合に応じてバス台数を増やす(これはホテルではできない)といったオペレーションを取り入れたことです。ネット企業らしい切り口で、既存のビジネスモデルの仕組みを変えていっています。

2つ目はスルガ銀行。地銀は地元企業などの法人融資が主流ですが、スルガ銀行は個人融資に特化した銀行なのだそうです(知らなかった)。消費者金融機関が取り扱う個人ローンには不安感があるなか、女性や収入が不安定な人をターゲットとして、土日にもトラックで巡回して対応するなどのきめ細かいサービスを展開しています。本書では、銀行がホテルのコンシェルジュ化していると説明していますが、とても分かりやすいですし既存業態との違いをよく表していると思います。銀行という手堅い業種でここまでユニークさを出しているのはすごいです。

3つ目は星野リゾート。有名な会社ですが、実は仕組みがユニークです。事業の主軸は旅館再生業で、基本自己所有はしないのだそうです。そうすることによって、これまでライバルと見ていた競合ホテルがパートナーという位置づけに180度変わります。これによって経営規模が拡大しました。またホテルで提供する料理の水準を維持するために、8割はセントラルキッチンでつくったものを全国に展開しているのだそうです。ただ10割にしないで2割は地元の特徴を出すことで、その土地ならではの体験が味わえながらも品質を保つことができているのだとか。うーん、なんかとっても賢い経営をしている印象です。



他にもコマツ、ゴア、ブリジストンなど、名前は聞いたことのある堅調なイメージの会社でも、実は内部で改革を行っていて、昔と今ではビジネスモデルがまったく違うという事例も面白かったです。個人的には最近はカルビーの経営が興味深いと思っていますが、ビジネスモデルで何が変わっているかという視点で捉えられるようになれると、一見つまらなさそうな経済のニュースが面白く見えてきます。

本書の一番の訴求ポイントは、1つのビジネスモデルを異業種に当てはめてみると新しい市場が切り開けるかもしれない、ということですが、このテクニックを活用していくためには、まず面白いビジネスモデルの事例を知識としてストックしておく必要があると思いました。
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