Give and Givenの関係が大事:GIVE & TAKE

公開日: 2018年12月3日月曜日 コミュニケーション ソーシャル

本を読むと、たいていその中に引用されている別の本の紹介があったりするので、それを繰り返していると次に読む本に困ることがなくなります。チェーンリーディングとでもいうのか、ブロックチェーンならぬブックチェーンとでもいうのか。そんなわけで、このGIVE & TAKEは最近よく耳にする『信頼』というキーワードのつながりで知った本で、人間関係を社会的に捉えたことについて書かれています。



GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代
アダム グラント (著), 楠木 建 (監訳)
三笠書房 2014.01

この書のタイトルはGive & Takeで、原書をチェックしてみると英題も同じです。副題は『Why Helping Others Drives Our Success』なぜ他人を助けることが成功につながるのか、という意味なので、副題もだいたい原文に忠実な翻訳であるようです。ちなみに監訳者の意見では、本書はひとことでいうと「情けは人のためならず」で、日本では割と受け入れやすい考え方ではないかということです。

内容ですが、まずはじめに3つのタイプに分類しています。

・Giver:まず先に与えることを考えている(Give & Given)
・Matcher:五分五分で損得を考えている(Give & Take)
・Taker:テイクするために与えることを考えている(Give for Take)

この中で、Giverの "Give & Given" がユニークで面白い視点だと思いました。比較して考えると、Give & Takeはビジネスライクで常に等価交換を目的としたやりとりに対して、Give & Givenはより広く先を見据えた上での投資的な考え方だということができると思います。Takerは自身の利益を中心として動きますが、長期的にみたときに周囲から協力を得られなかったり、自分以上のことはできないといった限界点があります。

Takerの代表例として建築家のフランク・ロイド・ライトや、エンロン創業者のケネス・レイなどをあげています。Takerは自己中心的な傾向が強いので、会社パンフレットに載っている写真がかなり大きいとか、SNSの写真が実際よりもよく見せる傾向があるとかに表れるということです。そういえば自分のプロフィール写真は...ちょっとあらためてみようかな。



Giverの特徴であり強みとなるのは次の4点です。

・人脈づくり:親切を与えて温めていくと知人の広がりやチャンスが生まれてくる
・協力:グループ全員に向けた目的で動くと、得られるパイが大きくなる
・人に対する評価:素直に失敗を認めたりやる気を重視すると、才能の開花につながる
・影響力:謙虚に相手のことをよく聞くことで、心の扉が開かれる

これらの要素は21世紀のインターネットサービスの普及や、ワークライフバランスだとか、あるいはブロックチェーンの分散社会の思想や、お金よりも信頼が大切な価値になる、といったことへの注目にもつながります。既に普及しているシェアリングエコノミーもGiver的な思想がベースにあるといえますが、今後、こういった流れはさらに強まるのではないかと思います。

一方で、GiverはTakerに搾取されやすい危険性もはらんでいるので、そのために気を付けるべきことは次の3つをあげています。

・信用しすぎないこと(TakerにはMatcherの態度で対応すること)
・相手に共感しすぎないこと(気持ちではなく考えていることを推察する)
・臆病になりすぎないこと(まず相手に有能だと認められること)

今後、Give & Givenの思想が背景にあるサービスはより増えてくると思います。SNS黎明期のときに「何で特にもならないことをネットであげる必要があるんだ?」というような批評が多くあったように、これから出てくる新しいサービスの価値が理解できない、という意見の側にならないよう、その根底にあることを社会的な視点や文脈から理解をしておくために、この本を一読してGive & Givenの大切さを知っておく価値は十二分にあると思います。
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