機会を考える機会が増えてきた:企業戦略論(上)ー2
公開日: 2017年1月26日木曜日 ビジネス マーケティング メソッド
岩嵜さんの「機会発見」を読んでから機会ということばに敏感になってます。でもこの機会という考え方自体は別に新しくもなく、その代表例が仕事をしていたら誰もが一度は聞いたことがあるSWOTのO=Opportunityです。なのになぜ今になってまたここに着目しているのか、今までと違う文脈で語られているのなら、大本をもう一度理解する必要があるんじゃないかと思い、VRIOの章に加えて、この章も頑張って読んでみました。企業戦略論【競争優位の構築と持続】上・基本編
Jay B. Barney 岡田正人 訳 ダイヤモンド社
2003年12月
感想を先に書いてしまうと、印象としてはマイケルポーターとかの考えに基づく、いかにして競合に打ち勝つかという観点で機会を探る内容でしたが、この本自体は2003年とそんなに古くもないので、従来の概念を再定義する位置づけでの機会や、グローバルなど多角的な視点で捉えたときの視点についても解説されており、機会を幅広く捉えることができると思いました。項目にすると下記8個があります。
1.市場分散型業界
2.新興業界
3.成熟業界
4.衰退業界
5.国際業界
6.ネットワーク型業界
7.超競争業界
8.コアなし業界
正直3とか4とかのいくつかはそんなに興味ないのですが、7や8はちょっと面白いなと思いました。7は言葉通り競争が半端ない市場でオンラインショッピングを一例で上げており、まさに超競争の厳しい業界ですが、その中で必要なこととして、柔軟性のある対応や先制破壊を上げています。この本が出た頃にAmazonが日本であったかは記憶ありませんが、振り返ってみると先制破壊の代表例だと思います。ビジネスをスケールしていくうえでこんな戦略を取っていたんだと思うと、改めて怖いな~と思います。まあ、僕は経営者でも何でもないただの会社員なので思ったところでどうしたという話ですが。
一方、コアなし業界とは、強い差別化を図る要素がなく品質とコストで見比べる仕組みになる傾向がある業界のことと説明しており、例の1つにタクシー業界をあげていました。でもみんな想像のとおり、いまこの業界はUber等のシェアリングエコノミーが参入してきています。コアなしでいられるのは政府の規制など、何らかの力が働いている中で成立する考えで、そこが緩和されると、どんな業界でも機会はあるんだなと思いました。本書では当然そのことも指摘したうえで、シェアリングエコノミーが出る前から、サウスウエスト航空など、人々の既成概念を壊す例はあることが説明されています。(そりゃ経済学者の大家の名著なので、僕なんかが指摘できる隙はこれっぽっちもないのです)
先に書いた8つの業界は、どれに対しても参入や変革の機会があることを上げています。なので、アイデアの発想で独自性がある機会だけでなく、それをビジネス化させていくことやスケールさせていくための機会という視点では、自分の知らないことばかりが書かれていたので勉強になりました。なりました、が、、経済学の考えは、いかんせん自分の取組みとは距離があります。平たく言うと1デザイナーがこんな偉そうなこと発言する機会は自分にはないのですが、デザインストラテジストとして引用できる時がきたら、それが自分にとっての機会発見なんじゃないかと思います。