マーケティングってすごい!:USJを劇的に変えたたった1つの考え方

公開日: 2017年1月15日日曜日 クリエイティブ デザイン マーケティング メソッド リサーチ

僕の所属はデザイン部門なんですが、企画のようなプロジェクトに関わっていると、これってマーケティングの取組みなのかデザインの取組みなのかを考えることがたまにあります。ただ、マーケティングって実はよくわかっていませんでした、この本を読むまでは。

この本を手に取ったのは、著者の森岡さんがテレビに出ていたのをたまたま観て、、、この人すごい・・・と圧倒されたことがきっかけでした。すごいな、と思った理由は大きく2つあります。1つはクリエイティブなバックグランドを歩んできたわけではないにも関わらず『これだ!』というアイデアをたくさん生み出していて、その発想法や力の込め方はデザイナー顔負けのクリエイティブ力を発揮していること(誤解ないように補足すると、本書の中でマーケティングはクリエイティブな職業だと言っており、本を読んでその意味が分かりました。僕だけに限らずマーケティングはあまりクリエイティブな職業ではないという偏見を持っている方は多いと思います)。もう1つは、そんなアイデアを考えながらも、それが確実にビジネスとして成功につながるよう徹底した数値や論理での検証をしていること。僕の中ではこの2つを1人の人が備えることはありえないとすら思っていたので、これがマーケティングの神髄なのか!と思い、読んでみました。


USJを劇的に変えたたった1つの考え方
森岡毅 KADOKAWA/角川書店
2016年4月

テレビで語られていた内容はとても分かりやすかったのですが、本書も著者が高校生の娘に伝えることを意図して書かれているとのことですので、専門知識がなくてもスッと理解することができる内容です。が、中身の密度はすごいものなので何度も読み返す価値があります。これまで仕事で関わるマーケティングは、市場リサーチの範囲でとどまって見えるように思えて、僕は正直あまり関心はありませんでした。これはそんな人にピッタリの本です。これまで偏見を持っていたマーケティングの本当の価値を理解する入り口に近づけると思います。例えば

『マーケティングとは売るというより、売れるようにする仕事』

と。なるほど、非常に入りやすいです。他にも、

『どう戦うのかの前にどこで戦うかを見極めること』

ということが書かれています。ここは僕が最も勉強になった内容で、マーケティングフレームワークの考え方で具体的に説明がされています。よく仕事をするときに、目的と手段の位置づけだったり、戦略と戦術の違いがぐちゃぐちゃになってしまうことがありますが、本書では例えば妻と仲直りすることを考えた場合、こんな風に整理しています。

・目的(Objective):妻と仲直りすること
・目標(Target→Who):妻
・戦略(Strategy→What):弱点の甘いもので攻める
・戦術(Tactic→How):ロールケーキを買って帰る

戦略と戦術は似ているようで実は大きく違うという話です。ここでは『甘いもので攻める』という戦略を立てていますが、これによって方針が明確になり、戦術がシュークリームでもドーナツであっても、攻めるべきポイントは大きく変わりません(効果の程度は変わります)。でもこれが甘いものでなくて、『素直に謝る』とすると、相手に訴えるポイントが変わりますし戦術も『夜にじっくり話をする』とか『メールを送る』とか大きく変わってきます。妻が好きではない戦略を立ててしまったら、いくらいい戦術を練ろうがうまくいかないことがよくわかります。なので、どう戦うかではなく、どこで戦うか、が大事なんです。

これはデザインの取組でいうところの『コンセプト』の位置づけをしっかり定める、という考えにも活用できるのではないかと考えます。どうしてもデザインを考えるときアイデアに注力してしまいがちですが、アイデアは戦術(解決手段)です。なのでいきなりアイデアの数を闇雲に出すのではなく、まず戦略(コンセプト)を設定したうえで方向性を持ったアイデアを考えることが大事、ということがいえると思います。この目的→目標→戦略→戦術の考えについて本書ではしっかり説明がされており、ここでの紹介だけだと誤解を与えることにもなりかねないので、興味のある方はぜひ本を読んでみてください。



他にもハッとさせられる内容が本書には随所にみられ、どんな職種の人でも(学生であっても)多くのことを学べる内容です。仕事の話だけでなく、物事の考え方や日々の取組み方についても参考になることは山ほどあります。1つすぐに実行してみようと思ったことがあります。

・毎日、自分の手の5本指をみてください
・中指、人差し指、薬指を見てその日の優先事項を3つ考えてください
・小指は70%未満の力でサッと効率的にやってしまってください
・親指はやったふりをして対応してください(笑)

不思議なもので、確かに通勤中の電車で手を見ながら考えると、頭の中でただ考えているよりも整理できるようになります。誰でもできることなので僕もおすすめです。気づいたらそのうち電車の中で手を見ている人が増えているかもですね。というような役に立つことから、人生の糧となるようなことまで、本当に素晴らしい本だと思います。

全然紹介しきれていませんが、マーケティングを考えるうえで押さえておくべきポイント、ブランド認知率とか市場構造をよく理解するとかが、本書ではもっとたくさん基礎からわかりやすく書かれています。分かりやすいし本質をついた内容ばかりなので、デザインという少し異なる立場だったとしても、置き換えて活用できることが盛りだくさんです。今後数年にわたって、自分の中の教科書になりそうな予感がしています。

USJを劇的に変えたたった1つの考え方
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