物欲ない人へのサービス?:物欲なき世界

公開日: 2017年3月5日日曜日 ソーシャル マーケティング リサーチ

何の本かは忘れたのですが、その中に今回紹介する本のことが書かれていたので気になって読んでみました。(僕が本を読むきっかけは大体が人から紹介されたり、本から本へのチェーンリーディングです)自分としてはちょっと違う視点で読む気分転換くらいのつもりだったけど、読み終えて今のサービスを考えるうえで見過ごせない大きなトレンドだなと思いました。


物欲なき世界
菅付 雅信
平凡社 2015年11月

モノからコトへと言われて随分と経ちますが、その間に僕自身が買わずに借りるようになったり、少ないモノで生活をして、なるべく体験にお金を費やすようになっていました。もちろんそれはカーシェアリングやヤフオクやスマートフォンなど(図書館もITの進化でとっても便利になりました)、そういったサービスを活用することで変わってきた点は多くあります。でもそういったことよりも、世の中の大きな流れとしての価値観が影響を与えていることの方がより強いのではないかと思っています。

最近それを実感した出来事があります。少し前、仕事でアメリカに行ったのですが(初めてのアメリカ大陸でした)大都市での食に対する意識の高さを顕著に感じました。でできるだけ地元のオーガニックな食材を扱った健康的な食べ物を扱うお店への注目が高まっているうえ、それを提供するためのサービスがすごくたくさん出てきていて、僕にとってのアメリカの食文化はハンバーガーとコーラの古いイメージだけだったので、良い意味で期待を裏切られました。ああ、もう21世紀なんだと。


前置きが長くなりましたが本書はそういった時代の変化を多角的な観点から捉えています。都市の視点を例にあげると、先進都市はポートランドの消費リテラシーの文化に影響を受け始めているところであり、一方で上海のような休息に発展を遂げた都市でもダウンシフターという考えが広まり、社会課題に対する関心を結び付けた動きが見られるようになっています。日本への訪日観光客も以前は爆買いでしたが、最近は体験にシフトしてきているようですね。

ただ、これは単純に文化の成熟度の話ではなく、健康的な食べ物を食べるためには高い所得がなければ実現できないし(アメリカは顕著に表れていて、低所得者は安い加工食品を食べる機会が多く肥満になりやすいとか)、国の経済状況や所得格差などが強く影響してます。また「お金は人を幸せにするか」といった話は昔からあるテーマですが、バランスをうまく取れる個人の価値観や社会や文化基盤がないと難しいといえます。(金融街に長くいるとライフスタイルや価値観が仕事に支配されやすい)

一方でコトへの関心が高まっているのは、モノでは解決できない社会課題がより顕著になってきているから、という視点もあります。例えば子育て環境に対する問題や不満、あるいは都市部の家賃高騰に反して若者の所得低下といった不安要素から、物質的ではないつながりや心のよりどころを求めて、それを支えるサービスが多く出てきているという側面もあるかといえます。


でそういった動向がどういったことにつながっていくかというと、例えば食や住に関心が高まったり、村上春樹の本に関心がより集まったり(バブル真っ只中の時でも人気はあったと思いますが)、パタゴニアや無印良品のような思想に共感を覚えたりするのだと。これは1つのブームではなくて、数十年単位で捉えるべき大きな社会的な流れだと思います。(と僕は実感しています)

で、こういった話から得られる教訓として、例えば新しいサービスや製品のデザインを考えるとき、人々は決して「新しくて面白い」から購入するわけではなく、もっと深い価値観や思考をしていることを理解する必要があるということが学べます。20世紀の価値観でデザインしないために、もっと深く捉えるストラテジーが大事になってくるのだと思います。(うまく最後につなげたつもりです)
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