人を見るというシンプルな大原則:申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。

公開日: 2017年3月11日土曜日 ビジネス マーケティング メソッド

なんだか過激なタイトルです。僕はコンサルではありませんが、最近の自分の仕事が一部近いような関わり方もするし、ここ最近はビジネス系のフレームワークに興味を持っていたこともあるので、読んでみることにしました。



申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。コンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにする
カレン・フェラン 神崎朗子 訳
大和書房 2014年03月

経営ビジネス系の本なので難しいのかと思ったら、予想に反してすごく読みやすい内容でした。(たぶん翻訳も素晴らしいのだと思います)加えて業種を問わず社会経験のある人ならほとんどの人が納得できると思います。歯に衣着せぬ言い回しで、コンサル業界の慣習をズバズバと切り捨てています。目次もこの通り。

イントロ:大手ファームは無意味なことばかりさせている
1.「戦略計画」は何の役にも立たない
2.「最適化プロセス」は机上の空論
3.「数値目標」が組織を振り回す
4.「業務管理システム」で士気はガタ落ち
5.「マネジメントモデル」なんていらない
6.「人材開発プログラム」には絶対参加するな
7.「リーダーシップ開発」で食べていける人たち

ここまで言い切れるのってすごい、同業の人に対して大丈夫なのかな?でも読めばそうだよなあと思えることがたくさんあるので、きっと本質を突いているのかと思います。ではその本質とは何かというと

管理分析 →ではなく→ 人と向き合う

ということに終始しています。それを本書ではよくダイエットに置き換えて説明をしています。心身共にずっと健康でいられるためには、正しい生活習慣・運動・休息・そして何よりも自分自身がそうでありたいと思える気持ちが大事なはずです。なのに○kg痩せるために、厳しいな減量プログラムを設定して、やっとの辛い思いで達成しても実は体も心もボロボロで、ちょっとしたらすぐリバウンドする、でも新手のダイエット法はあとをたたない(新たなメソッドが出てくる)。こういったことが私生活で置き換えてみればすぐにわかることなのに、仕事ではよく起こっています。

個人的に特に面白かったのがは第3章の数値目標についてです。ストレッチ目標を設定すれば社員は知恵を絞って達成方法を考えるはずです。でも実態どうなるかというと、顧客の意見を聞かずに勝手に修理して高額請求する・定刻運行を守るために乗客を待たない・見込み発注して業績をごまかす等、目標達成のために操作をするようになります(確かに知恵は絞っているけど、これじゃ本末転倒)。これは極端な例かもですが、大なり小なりどこの会社でも見られる現象だと思います。

あと、プロジェクトがうまくいかない理由の1つに『不信』があげられていましたが、これはすごい重要なキーワードだと思いますし共感します。僕自身も経験上、うまくいくのは信頼関係を築いたうえで取組めたから、逆にうまくいかないのは人と人の壁や部門間の壁など、相手に心を開かず互いに信じていない状況でうまくいった試しはありません。そのためには、腹を割って話せるための環境構築が必要なのであって、マニュアルや数値管理でないことは確かにその通りです。



読み終えた感想として、とにかく気を付けようと思いました。僕自身、以前は結構メソッドやフレームワークに傾倒していましたが、1年前くらいからなんかそれば違うなと思うように変わってきました。使うことが目的になってしまって中身が吟味されていない状態が見られるようになったからです。最近は必要に応じて用いる手段の1つにして、自分から「このフレームワークを活用しましょう」とは言わないようにしてましたが、この本を読んで、より気持ちが強くなりました。使うこと自体をやめる必要はないと思いますが、「今この取組みはちゃんと目の前の人たちと向き合っているのか?」を常に問うようにしたいです。

幸いにも僕ははじめ、ユーザビリティやユニバーサルデザインでの分野で取組んできたこともあり、ユーザー視点が不在で進められている状況はつくらないように意識していたので、より広い意味合いでHCDの考えを大事にしていきたいなと思います。

一方でこの本を読んでしまったことで、この先、他の経営やマーケティング系の本が読みにくくなるなぁ、というのも学んでしまったような気がします。
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