濱口秀司のイノベーション塾:問題解決へのダイアローグQXA
公開日: 2017年3月13日月曜日 クリエイティブ デザイン ヒト メソッド リサーチ
濱口さんは僕の憧れの人です。ご存知の方も多いとは思いますが、ビジネスデザイナーとして、製品やサービスに限らず社内オペレーションシステムや経営意思決定などまでをデザインとして扱ってしまう、僕からすると雲の上の存在のような人です。濱口さんはメディアには多く出てはいませんがネット上にとっても為になるページがいくつかありますので、まだ知らない方は一度調べてみてください。少し前ですがTEDxにも登場していますBreak the bias: Hideshi Hamaguchi at TEDxPortland 2012
先日、ダイヤモンド社が主催するセミナーイベントに参加することができました。このセミナーは毎年行われていますが、昨年度からアジェンダがすべて質問形式に変わったため、ネットや雑誌記事にはあまり載っていない、より具体的な内容や事例を聞くことができました。全て公開情報なわけではないため、ここではお話しの中で、取組み方について印象的だったことを3つにまとめて書き記しておこうと思います。(濱口さんに倣って要点を整理してみました)
●Passion:心がけ
全てを論理的に(それは見事に)説明する濱口さんですが、やる気や諦めないことをとても強調していたのが意外でした。具体的には『その日の中で必ず答えを1つ出す』『不可能に見えるような問題でも絶対に答えがあると思い込むこと、思わないとできない』『プレゼンは内容の前にパッションがないとダメ』『ルールを破ってでもやりきる』など。今までにないイノベーティブなことはまだ世の中に存在していないのだから、何かに頼ったりしないことの大切さが分かりました。空を飛べると思っていないと絶対に飛ぶことができないように。
●Communication:対話
これまでやってきたことの多くを根底からくつがえす理論を説明をされて、今まで自分は何をやっていたんだ...と思えてしまうほど衝撃の連続でしたが、その中で唯一、自分が重視していた『クライアントとの対話』を濱口さんも強調していたのは、とても嬉しい気づきでした。
なぜ大事かというと、1つは毎回リサーチする時間や知識といった資源が潤沢にあるわけではないから。それを自分で調べるよりも、その道の専門家であり、当事者としての課題意識を持っているクライアント本人から聞く方が、質の高い情報が得られるし効率的でもあるから。僕もそういった理由でよくヒアリングをしています。
また、別の視点としては、クライアントが話す内容の中にバイアスが潜んであり、それを見つけて構造化することによって、これまでその業界になかった視点からアイデアを見つけられるということがあります。僕はそこまで意識したことはあまりなかったので(偏ってるなと思うことはよくありますが)、ここまでできて始めて相手の話を理解できるということなのかなと。
●Action:実践
理想の方法論や進め方があっても、現実はプロジェクトの数ほどその性格は違うので、与えられた範囲の中で考え、目の前のことに集中するべきということです。なので濱口さんは方法論に捉われず(同じフレームワークは二度と使わないそうです)、その時その時でベストな固有解を考えるそうです。やはり自分の頭で考えることが大事、プロセスでガチガチに固まった手法はある意味、思考停止に陥りがちなので気をつけたいところです。
加えて、必ず毎日答えを出すということを強調していました。その理由に当たる説明として、1つには答えを出し切った状態のモノで議論し合わないと相手との理解し合えないから。(空中戦の不毛な議論はよくあります)。また、そもそもどの情報量まで到達したらアイデアを考えられるかといった判断基準はあるようで実はなく、初期の情報量が少ない状態の方が意外と本質的なバイアスに気づくことができるので、待っていないで初日から出した方がよいということ。初期段階のアイデアが一番良かったということは結構多くの人が実感することではないかと思います。
というのが僕なりの感想なのですが、話を聞けば聞くほど自分には何ができるんだろうか?という気持ちになってしまったので、懇親会のときにそんなことを少しお話ししたところ、一つアドバイスをいただきました。
●石の上にも三年
色々試行錯誤をしてきた中で今に至るので、そんなすぐにできることではないから、長い期間で考えて、自分がやるべきことを取り組んだ方がいいということでした。濱口さん自身、瓦の研究(!)から始まり、投資案件の意思決定、新規事業企画、デザインファームでの戦略ディレクター、と幅広く歩んできた経歴の中で、1つのことを3年くらいじっくり取り組んだから今色々なことができるようになったということです。
色んなことを知ると目移りしてしまいますが、上のActionのところにもあった通り、まずは今の自分の環境の中でできることを考えて、腰を据えて目の前のことに集中しようと思います。
目標の人がいるというのはとてもありがたい状況です。高すぎる目標なので、本当はもうちょっと手に届きそうなくらいがいいのだけど。