破壊+コンサル=すごいデザイナー:DISRUPT デザインコンサルタントの仕事術
公開日: 2017年3月26日日曜日 クリエイティブ デザイン メソッド リサーチ
ここで取り上げている本が経営やマーケティング寄りのものが多過ぎる気がしたので、もうちょっと自分に近くデザイナーが語る内容の本を読んで、自分の中でのバランスをとってみようと思います。そんな中でこのタイトル(邦題のほう)はちょうど真ん中に来るような位置付けです。DISRUPT デザインコンサルタントの仕事術
ルークウィリアムス 著、福田篤人 訳
英治出版(2014.11)
でも実は本質をついているのは原題の英語の方です。DISRUPT=破壊、というのが本書を通じて伝えたいテーマになっています。それは何かというと、新しいモノやコトを生み出すためには、既存の概念や常識を打ち壊す、型破り的な視点や発想が必要であるということです。著者は世界的に有名なデザインファームのfrog designで培った経験をもとに、破壊的思考の大切さや、デザイナーならではの強みや視点を本書にまとめています。
目次は大きく5つのプロセスで説明されていて、すべてに破壊がついているのが何か気持ちいいです。破壊的プレゼンってよくわからないけどすごい。
1.破壊的仮設
2.破壊的チャンス
3.破壊的アイデア
4.破壊的ソリューション
5.破壊的プレゼン
個人的に興味深かったのは前半の仮説とチャンスの章です。アイデアを考える前に機会領域(Opportunity)を見つけるという思考手順は、最近読んだ「機会発見」や「USJを劇的に変えたたった1つの考え方」にも通じるところがあり共感できますし、自身のスキル強化として注力したいところです。アイデアを思いつくのはデザイナーの得意分野だけど、機会=チャンスを見出すスキルは必ずしもそうではないと思うので。
大きな話をすると、このブログは「デザインストラテジーとは何かを考える」というテーマでやっていますが、この本にコンサルタントやビジネスストラテジストとのアプローチの違いが明確に記されています。つまり既存の常識を壊すアプローチは、全く体系的ではないし正解はないから裏付けや保証も極めて少なく、そういったものは論理的思考の中では積極的には取り扱わないからです。で、そんなアプローチはMBAではなくデザイン教育でやられてきたので、デザイナーだからできることの価値はここにあるのだといえます。
その必要性を感じて出てきたのがMBAのプログラムの中にデザイン思考を取り入れた動きだと思うのですが、改めて冷静になってデザイン思考の中を見てみると『破壊する』とまでの過激な言葉は見当たらないし(破壊的イノベーションの考え方はあるけど)
全般的にやや論理的に理解するための内容に偏っている印象を受けます。これはデザイナーでなくてもデザイナー的な視点で取り組むための歩み寄りの手法であるのが理由だからと考えますが、デザイナーにとって昨今のデザイン思考の動向に今一つ共感できないのは、これが理由ではないかと思うわけです。IDEOが提唱したデザイン思考に対して、ライバルの様な存在にあたるfrogが破壊的思考を打ち出しているのが面白いです。別に仲は悪くないと思うんですけどね。
そんなわけで、改めてデザイナーのスキルに自信をもって、デザイン視点だからこその切り口の鋭いストラテジーを打ち出せるよう、探求と研鑽を続けていこうと思った次第です。