それは戦略ではないのかも:良い戦略、悪い戦略

公開日: 2017年5月10日水曜日 ビジネス マーケティング

このブログのタイトルはデザインストラテジーだから、名前に戦略がついている本を気にしないわけにはいかないので、僕が苦手そうな経済学者が書いたものも頑張って読んでみることにしました。が予想に反して、意外と分かりやすく、良い本だなと思いました。




良い戦略、悪い戦略
リチャード・P・ルメルト 村井章子 訳
日本経済新聞出版社 2012.06


著者は日本ではあまり知られていないけど、経済学者では有名な人のようで(僕はもちろん全く知りませんでした)文体や事例が、相手に向かって語りかけているような内容だったので、頭の中に入ってきやすかったです。加えて、割と率直なものいいで書かれているので、理論や理屈よりも実感として納得しやすいことも、本書の魅力だと思います。

まずは、良い戦略と悪い戦略の違いは何かについてですが、これは戦略ではない!という理由がとても分かりやすいです。

1.空疎である:分かり切ったこと、言葉で飾る、幻想理想だけ
2.重大な問題に取り組まない:上っ面だけ、ビッグワード、穴埋め式
3.目標を戦略と取り違えている:願望だけ、道筋を示さない、フォーカスしない
4.間違った戦略目標を掲げる:寄せ集め、長期的、非現実的な目標


実感としてどれも分かりますが(もしかしたら自分自身がやっていたかもしれない)特に3に強く共感します。世の中の会社で見られる多くの悪い戦略はこういった傾向があるのではないかと思います。これを判別する方法は簡単で

聞いた後すぐにメンバーが行動に移せるかどうか

ということだと思います。例えば戦略が「お客様を喜ばせる」だったら、何をどうやって喜ばせればいいのかわからないし、「達成するまでやりぬく」みたいな根性論だったら、それは個人の資質の問題であって戦略ではないといえます。じゃあどうすれば戦略が立てられるかというと、

1.診断:重要な問題点を選り分ける
2.基本方針:取組み方を示す
3.行動:設計された取組み方をつくって実行する


テクニックや知識は必要だとしても、基本となるプロセスは次のようなもので近道はないようです。特に、診断(調査や分析)をしなくても戦略は立てられると考えてしまいがちなのは、面倒なことや重要なことから目を背けたいだけだといえるので、本気の姿勢が結果に表れそうです。




あと、過去の記事ともシンクロする内容ですが「戦略とは仮説である」という内容が興味深かったです。事例としてスターバックスを上げていました。始めは単純にイタリアのコーヒー文化をアメリカで展開しようとしていたのを、やってくうえで方針の修正を繰り返して、気づいたら独特の事業内容と戦略ができていたということです。これは僕も含め誤解しがちな点ですが、戦略は一度決めたら愚直に従うものではなく、やってみて違ったらどんどん変えていけばいいということです。始めの悪い戦略に立ち返って考えてみると、ちゃんと評価・検証ができる内容になっているか、が戦略の大事な点であるともいえそうです。

本書を読んで一番の学びは、目標と戦略の違いがはっきりと理解できたことです。デザインの取組みの中ではよく『ビジョン』という言葉を使いますが、このビジョンは目標なのか戦略なのか、はたまたまずは願望なのかを設定しないまま進めると、あやふやなことになりそうです。デザインで描くビジョンは傾向として、絵に描いた餅で、それは美味しそうなのですが、なかなか食べられないことが多いので、気を付けたいところです。
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