デザインリサーチのバイブル的存在かも:サイレントニーズ
公開日: 2017年5月15日月曜日 コミュニケーション ソーシャル デザイン マーケティング メソッド リサーチ
こちらは先日セミナーを受けたときに、Takramの佐々木さんが強くおすすめしていた1冊です。この本自体は知っていたのですが、どんな内容かあまり興味を持たずそのままにしていたところだったので、読むキッカケをもらうことができました。
著者のJan Chipchaseさんは、元NOKIAで活躍していたデザインリサーチャーで、frog designに転籍したとき、業界でちょっとしたニュースになったネット記事を読んだ記憶があります。今はfrogにいながらも自身のデザインブランド「Studio D Radiodurans」を立ち上げているようです。僕もまだ内容はどんなものか知りませんが、とても興味あります。
サイレントニーズ ありふれた日常に潜む巨大なビジネスチャンスを探る
ヤン・チップチェイス サイモン・スタインハルト 福田篤人 訳
英治出版 2014.03
本書はいわゆるビジネス書や実用書の様な構成はしておらず、散文的で、一冊を通して読むことで、旅をしているような感覚になり内容が伝わってくる、といった感じの変わった本です。(自分でも何いってるのかよくわからないけど、要するに不思議な本です)「はじめに」で本書の目的をこのように書いています。
「人々が何をしてなぜそうするのかといった観点から、ものごとが持つ真の価値を理解していけるようになること」
目次もこの8つによって全てが網羅しているわけではなく、それぞれの観点から、ものごとや現象の観かたや捉えかたを理解するという内容です。
第1章 心の一線を越える
第2章 日用品による社会生活
第3章 過去、現在、未来の波をつかむ
第4章 持ちものは人を表す
第5章 文化的コンパスの微調整
第6章 信頼の問題
第7章 本質を見出す
第8章 大いなるトレードオフ
第2章 日用品による社会生活
第3章 過去、現在、未来の波をつかむ
第4章 持ちものは人を表す
第5章 文化的コンパスの微調整
第6章 信頼の問題
第7章 本質を見出す
第8章 大いなるトレードオフ
例えば7章で出てきた例として、ベトナムのガソリンスタンドでは、専用の建物を持たず、ペットボトルに入れたものを車のそばにきて売りに来る、という商売スタイルがあります。まずはここに!?という意識が働くことが大事です。そのうえで洞察すると、この事例は本質だけを残した究極な姿として捉えることによって、ガソリンサービスの価値提供とは何なのかを再定義できるようになります。ちなみに僕もベトナムに旅行したときの衝撃的な記憶の1つにこれがあり「なるほど、これでいいんだ!」と目から鱗の1シーンでした。当時の写真(まだフィルムでした)がこれになります。酒屋ではないです。
実践的なアドバイスとしては、リサーチするときの環境についていくつかありました。例えばホテルではなく住宅地の中のゲストハウスを借りて、時には家主と会話しながらオンオフの区切りなくチームメンバーと話し合える場をつくるとか、必ず現地スタッフと組んでローカルの情報に触れる(意欲の高い学生は有力とのこと)。自転車を買って動くこともおすすめしていましたが、僕も自転車乗りなのでその価値はよくわかります。持っていける折り畳み自転車買おうかな...。
データの取り扱いについての興味深い点は、よいリサーチは正式なデータ収集とそうでないデータ収集のバランスが良いこと、ということです。正式なデータとは、定量調査であったり教科書的なやり方でエビデンスの明確な情報の集め方のことを指します。一方でそうでないデータ収集とは、現地で感じ取った気づきであったり、一見関係性の薄そうな事象に対するヒント等を指します。後者がいわゆるデザイナーならではのリサーチスキルですが、デザイン視点が強すぎると正式なデータとの紐づけが弱く主観の域を出ない傾向になりがちです。ここをつなげるのがデザインリサーチャーとしての腕の見せ所ともいえるので、今後、意識して取組んでいきたい視点です。
デザインリサーチの8大原則というのも巻末に紹介されていたのでここに書きます。見出しだけではあまり理解できない項目もあると思うので、気になった方は本書を手に取ってみてください。
1.リサーチの表面を整える
2.仕事の質は現地スタッフ次第
3.すべては滞在する場所から
4.人集めには何通りもの方法を
5.クライアントよりも参加者優先
6.データに生命を
7.いつものルールは通用しない
8.息抜きする余裕を持つ
2.仕事の質は現地スタッフ次第
3.すべては滞在する場所から
4.人集めには何通りもの方法を
5.クライアントよりも参加者優先
6.データに生命を
7.いつものルールは通用しない
8.息抜きする余裕を持つ
という感じで、うまく感想文をまとめることはできなかったのですが、製品の使い勝手に取組む人が「誰のためのデザイン」を必ず読むように、デザインリサーチをやる人にとっての必読書なのかなと思いました。たぶん3か月後、半年後、1年後にもう一度読むと、より深い理解ができるのではないかなと思うので、そのときになったら、この文章も手直ししようかなと思います。
読んだ人いましたら、ぜひ意見交換しましょう。