ビジネスをバックグラウンドに持つ人が語るデザイン:Design for Innovation 2017

公開日: 2017年5月24日水曜日 デザイン ビジネス リサーチ

カンファレンスの参加です。SFと東京をつなぐデザイン&ビジネスコンサルティングのbtraxが主催するイベントで、2つの都市を中心に活躍しているゲストスピーカーのお話を聞くことができました。


プログラムはオフィスデザインから行政の取り組みなどバリエーション豊かな内容でしたが、個人的にはやはり、デザインとビジネスの間で実践をしている人のセッションが気になりました。その中の一人、frog design でストラテジストのTimothy Moreyさんのお話を聞いた内容と、運よく質問と懇親会で少し会話をすることができましたので、紹介したいと思います。

まずTimさん自身はもともとビジネスサイドのバックグランドでMBAを持っています。スピーチは、なぜ今デザインとビジネスに注目が集まっているのか、という説明から始まりましたが、実例としてfrogが取組んでいるプロジェクトの対象や狙いが、ビジネスを加速させることや、普及する価格帯になるタイミングを見据えたB2C参入のビジネスプラン、組織の仕組みや文化を変えていくことなど、デザインの領域が相当広がっていることに驚きました。おそらくストラテジストやビジネスデザイナーといった人の役割は大きいはずです。実例の紹介の中に、成果として数値で示していたことも、これまでのデザインファームでは見られない傾向でした。


その後にIDEOの野々村さん(ビジネスデザイナー)とPivotalのHeewonさん(デザインマネージャー)を交えて、多様化するデザイナーの役割、立ち位置について、デザインを取り入れるうえでのマインドセットの重要性、といったようなトークセッションがありました。興味深かったのはHeewonさんが、大事なのはとにかく人でタレント性のある人を見つけてどんどんドライブさせていくこと、ということを言っていましたが、デザインの取り組みがシステム化されつつあることで、デザインのスキルもある意味均一化されそうな状況の中、デザイナーの専門性や独自性といった点を今一度フォーカスすべきではと僕思っているので、とても賛成できる内容でした。


frogではツールとしてのデザインを強調していたので、質問タイムのときに僕は「ツールを提供することで思考しなくなる(テンプレート思考)誤った使い方を招く可能性があるが何か工夫しているか?」という質問をしました。それに対する答えとしては、パイロットプロジェクトで小さく実感を与えて気持ちを寄せていくこと、マインドセットだったり文化を育むことの大切さを言っていました。モデレータのBrandonさん(btraxのCEO)は、日本企業の悪い傾向として、答えをすぐに求めようとする、納品文化であることをあげていましたが、個人の意識だけでなく組織的な変革がないと(特に大企業は)難しいということを象徴するような例であるかといえます。

懇親会のときにはもう少し個人的な関心で「Timさんはビジネス→デザインだけど、僕はデザイン→ビジネスへの踏み込みを試みている。デザインがバックグラウンドだとビジネスの奥深いところはハードルが高いし、そこに行くべきかどうか?」といった質問をしてみました。それに対する答えとしては「frogではデザインがベースの人はプロジェクトマネージャーとして全体を俯瞰する立場でビジネスに寄っていってる。1人で全部を網羅できる人もいるけど実際には難しいので、ビジネス出身とデザイン出身の2タイプのストラテジーで取組めるのが理想で」ということでした。(英語の会話だったので、多分こんな感じ)

この2タイプという視点は、自分の立ち位置を考えるうえでとてもよい整理になりました。いわゆるデザインストラテジストといっても、その中でも色々なタイプや専門スキルの人がいるので、その中で自分はデザインがベースにあるならば、そこで培った経験やセンスは活かしつつビジネスとの接点を探しつつ、ビジネス出身でデザインに興味と理解を持つパートナーを見つけることが必要だというように思えました。ビジネス出身でデザイン組織で活躍する人は増えてきましたが(IDEOの野々村さんや前にご紹介したTakramの佐々木さんもその1人)、デザイン側からストラテジーを扱い、かつビジネス出身のアプローチにはないという取組み、という実例はまだあまり見られないと思います。ここを探求していければ、と思いました。

他のセッションのメモもはっておきます。途中でペンのインクが出なくなってしまったので線が太くなったり細くなったりしちゃいました。(どっちがいいんだろう?)



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