「伝える」からデザインを考えると:「行動デザイン」の教科書

公開日: 2017年6月3日土曜日 コミュニケーション デザイン マーケティング メソッド

人の心にアプローチすることを生業としている広告代理店が、そのノウハウを惜しみなく紹介している本です。たまに広告系の業種の人と話をするとき企業文化がずいぶん違うなと感じることがありますが、彼らが日ごろ何を意識していて、逆に僕がいかに欠けている視点や意識を、本書を読むことによって少し知ることができました。




人を動かすマーケティングの新戦略「行動デザイン」の教科書
博報堂行動デザイン研究所、國田 圭作
すばる舎  2016.08


本書の一番のキモは、モノが人とつながるためにはその間に『行動』を入れて考える、というものです。どういうことかというと、そのモノを買おうと思わせるために、人は何のためにどんな行動を従っているか?ということの要因を探り、関心を持たせるキッカケをつくることによって、購買に導くことができるようになるということです。数式にするとこうなります。


行動=動機×能力×きっかけ

例えば映画は昔、時間があるときに暇な人が見に行く行動が特徴でしたが、今はそういった動機で映画館に行く人は少くなりました。なぜならばネットやレンタルサービスが普及したおかげで映画館に行かなくても映画を観ることはできるからです。では今は何かというと、特別な時間を過ごせるための場所、例えばデートのためとしての行動があげられますが、シネコンの店舗サービスはこういった行動に基づいてつくられたものになっています。




本書はそういったノウハウや事例がいくつも紹介されていて、楽しみながら読むことができますが、個人的に面白いなと思ったものを箇条書きでいくつか記録しておきます。割と心理学的なアプローチも多くて、もう一度「影響力の武器」を読み直してみようかなと思います。

・あなたが思っているほど人は動かない
・ついでに、みんなやってる、等のスイッチで人は動きやすくなる
・行動を妨げる5つのコスト:金銭、肉体、時間、頭脳、精神
・行動アクセルを加速させる方法:急かす、対決させる、帰属意識を刺激する...
・行動ブレーキを緩和させる方法:お墨付き、現場が来てくれる、口実がある...
・人は得よりも損の方が敏感


IoTについての言及もあったので書いておきたいと思います。著者は『IoTをモノ発想で考えると失敗する、何の行動を誘発するかで考えないと、人は利用しない』と述べています。これまでの流れでこう書くと、当たり前のことを言っているように思えますが、実際はこういった視点のIoT機器は多いと思います。

例えばロボットなんかは技術視点のできることを無理やりユーザー体験にしようとしている傾向があり、違和感を感じるものが多いと思います。人はもはやちょっとの便利では心は動かないと思うので、先進機器こそ技術は一度おいて、何がユーザーの行動を誘発するか、という視点で一度考え直してみる必要がありそうです。

それよりも先に広告代理店がロボットをつくって販売する日もそう遠くはないかも?
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