スペキュラティブデザインを語る:Speculative Dialogue #01

公開日: 2017年6月23日金曜日 クリエイティブ デザイン 建築

何回か前に読んだスペキュラティブ・デザインについて、感想を周りの人に話したら、僕なんかよりもずっと詳しく考えている人たちがいました。そこで、これはじっくり話をしないと!と勝手に思いがたかぶり、個人的な知り合いの人たちを集めて、スペキュラティブ・デザインを語り合う会、通称スペキュラ会(という名の飲み会)をしました。

エッジの立ったメンバーが集まってくれました。(個人名は非公開)

・スペキュラティブリーダー(すごい同僚)
・起業家兼思想家デザイナー(すごい同僚)
・デザイン博士(お世話になってます)
・世界を知るデザインプロデューサー(今度会社行きます)
・建築業界を知り尽くすエディター(本買います)
・ぼく(記録係)


テーマは下記2つの本についてです。

スペキュラティヴ・デザイン
問題解決から、問題提起へ。—未来を思索するためにデザインができること
アンソニー・ダン、フィオーナ・レイビー (著)
久保田 晃弘 (監修)、千葉 敏生 (翻訳) 、牛込陽介 (寄稿)
BNN出版(2015.11)


S M L XL
Rem Koolhaas, Bruce Mau, Hans Werlemann
Monacelli Press (1997.10)


2つ目の本はこのブログで初出ですが、前に別の本で紹介したレム・コールハースの大作です。都市をサイズごとにS,M,L,XLと個人住宅から都市まで分けて、自身が手掛けた建築とそれに伴う考えや分析などが織り交じった本ですが...まあこれが読んでも正直全然わからない本なんです。加えてこの厚さ、確実に凶器になりえます。



ですがレム・コールハースの考え方はスペキュラティブ・デザインとの接点があると考え、建築分野に明るい人も交えて、語りながらみんな学びあおうという意図で企画しました。レム・コールハースについてはこちらも参考にしてください。

編集する建築家-OMA側:行動主義 レム・コールハースドキュメント

魅惑的なリサーチ-AMO側:行動主義 レム・コールハースドキュメント

一応お酒を飲みながらも記録を取ったので、そのメモを下の方に載せますが、大まかな話題のポイントをいくつか整理してみたいと思います。

●批評文化について
建築側の人からの質問で印象的だったのは「産業界のデザインでは批評をする人はいるの?」というものでした。たぶんあまりいないと思います(理由:例えばGマークでも審査員は同業のデザイナーがほとんどだから)。建築は、そこに住む人のライフスタイルや歴史や経済など複合的な要素が関わる分、思想的であるけど批評する文化もあって、そういった状況がスペキュラティブな問いを生み出し、行動への働きかけにつながるのかなと思いました。


●ビジョンが持つ
デザイン思考のプロセスではビジョンを描くことが多くありますが、一度描くと修正や見直しがされることは実は少なく、継続性という面では弱さにもつながります。それよりも問いを立てて、自分で手を動かしたり、考え続けることでビジョンを変えていく方が大事では?デザイン思考の取り組みでも上手くいくかどうかは、結局はそこに関わる人の想いが一番大事です。スペキュラティブ・デザインが持つ力はこういうところに必要とされるのではと考えることができます。


●各国の思想の違い
おおざっぱに分けると、アメリカはマーケティングの国で、ヨーロッパはもっと思想的。このあたりがデザイン思考の認識や普及にも大きく影響を与えているような気もしますが、アメリカは問いに加えて、解決と結果への視点がより強く、なのでビジネスにも表れやすいのでは?そうしたとき、日本の思想やスタイルとは何だろうかを考えることで、日本ならではのスペキュラティブ・デザインのやり方があるのかもしれないと思いました。アメリカ的もヨーロッパ的も何か完全には浸透しきれない要素がある気がします。


●探求するマインド
例えばAIを研究する人でも、それが技術的解決のためにやっている人か、人間の根源を知りたくてやっているか、では視点が全然異なります。産業界や競争社会のムードに影響されすぎると、あまり思想的なことに意識が働きにくい。この社会構造に対して個人の心がけやしくみに対する仕掛けを考えないと、スペキュラティブな問いかけが効果を与えにくいのでは?


応まとめてみましたが、スペキュラティブなトークなので結論的なものはありません。(半分くらいは他のおもしろ話)その代わりに僕は色んな考えや疑問が新たに出てきましたし、もっと深く話してみたいなと思いました。本当にすごい面白い人たちに集まっていただいたので刺激的な時間でした。ありがとうございました!

れに味をしめて2回目をそのうちにまたやりたいなと思ってます。興味ある人はこのスペキュラ会にぜひご参加ください。産業デザインに着目する若手建築家とか、雁の群れ理論とか、次に向けて気になるキーワードもいろいろ出てきました。
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