よい質問をつくる力:たった一つを変えるだけ

公開日: 2017年7月11日火曜日 コミュニケーション メソッド リサーチ

この本も知人からのおススメ本です(最近、本をキッカケにコミュニケーションの幅が広がっています)。問題発見をしたり仮説生成をしていくためには『よい質問』を投げかけることが大事だとされていますが、この本は教育分野で生徒が質問を生み出すための方法論をまとめた内容です。



たった一つを変えるだけ クラスも教師も自立する「質問づくり」
ダン・ロススティン、ルース・サンタナ、吉田新一郎(訳)
新評論 2015.09


まず、なぜ『よい質問』を考えるのかという背景から整理します。よく言われていることですが、従来の知識偏重型の教育では、与えられた問題を解くことは得意でも、答えのない領域で取組むことが苦手であるとされています。世の中のルールが大きく変わっている今、変化に対応できなかったり自ら新しいルールをつくっていくことができない企業や機関に対する危機感から、『よい質問』を生み出すことの重要性が注目されています。

少なくとも僕が学生だったときは、こういった観点での教育はほどんどありませんでしたが、1つだけ印象的だった授業を思い出しました。中学の歴史の授業で、日本は自衛隊を持つべきか持たないべきか?という問いを先生が設定して、45分間たっぷりとディベートをする場がありました。当時はディベートなんてこと自体知らなかったけど、今でも記憶に強く残っているというのは、答えのない物事を考えるきっかけになれた授業だったと思います。K先生ありがとうございました。

ですが、僕の例はあくまで、テーマとなる問いは先生から与えられたものであり、そもそもそういった問いを自分たちで設定する、ということはやってきませんでした。なので、この本ではさらに一段階上の視点で、質問をつくるためのやり方について大きく7段階でまとめています。


例えば『喫煙』をテーマに取り上げたとき、喫煙にまつわる色んな質問を考えます。なぜ人はタバコがやめられないのか?喫煙は健康にどのような影響を与えるのか?...など。こういったテーマでは、傾向として喫煙をなくすための方向に話が行きがちですが『例えば喫煙の良い面は何があるか?』という問いを設定することで、タバコ部屋で生まれるコミュニケーションや一服という行為のON/OFFの切り替えなど、違う切り口を見つけることができます。こういった視点が『よい質問』だと思います。

デザイン教育を受けた人は割と「なぜ?」を考えるクセが身についている人が多いと思います。なぜなら、提案するデザインに絶対の正解なんてないので、自分なりの問題意識なり変えていきたいことを設定しないと、デザインの意図が体現されないからです。ただ、そうはいっても僕自身『よい質問』をつくる教育やトレーニングを重ねてきたわけではないので、今からでも意識したいところです。

僕にとって、デザインストラテジーは鋭い視点によって新しい機会領域を発見することが一番大切だと思っているので、その機会領域を得るためには『よい質問』によって気づきを得ることが重要です。質問力はストラテジストにとって大切なスキルでありセンスであるような気がしています。

ちなみに、本書の中で何回かCritical Thinkingの言葉が登場しますが、注釈で書かれていたことがなるほどと思ったので紹介します。クリティカル・シンキングは一般的には『批判的思考』と訳されるけど、少し丁寧に言うと『批判的だけど建設的』、もっと深くとらえると『大切なものを選び出す力』や『思いやり』という言葉にたどり着くのだそうです。批判的と思いやりは真逆の意味合いですが、後者の方で理解することによって、日本ではいまいち定着しないクリティカル・シンキングの大切さが分かるようになりました。言葉の定義って大事ですね。
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