どこよりもユーザーになりきる会社:スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営

公開日: 2017年7月30日日曜日 クリエイティブ ソーシャル マーケティング

アウトドアが好きなので、スノーピークの商品もいくつか持っています。商品のデザインはもちろん、店舗展開や会社のビジネスモデルなどをずっと気になっていましたが、たまたま仕事で新潟に行く機会があったので、地元の会社を知っておくいいタイミングだと思い、新幹線の中で読んでみることにしました。



スノーピーク「好きなことだけ!」を仕事にする経営
山井太
日経BP社 2014.06

スノーピークの会社は創業は1958年、著者の山井太さんが社長に就いたのち1996年にいまの社名に変更しています。スノーピークはキャンプ用品の中でも特に品質がよく高めの価格帯に位置付けられており「スノーピーカー」といわれる熱心なファンが多くいることで有名です。最近は直営店もいろいろなところにできて、多くの人に目にする機会が増えてきました。

そんなスノーピークがどんな戦略を持っているかというと、一言でいうと

「徹底的にユーザー視点で取り組む」

に尽きると思います。それはユーザーに寄り添うといったレベルではなく、ユーザーになりきるという方があっています。社長自身、毎年30~60泊キャンプしている(!)ほどの徹底的な愛好家で、社員の人もみんなキャンプ好き、採用基準の中にも心からキャンプが好きかどうかが問われるほどだということです。

今回はたまたま新潟に行く機会があったので、刃物など金属加工で有名な三条市にあるSnow Peak HEADQUARTERS(本社オフィス+直営店+キャンプ場)に寄ってきました。残念ながら工場・会社見学はいま休止中なので中には入れませんでしたが、本の中に載っている写真と外観から、おおまかな感じをつかむことはできました。とてもオープンなたたずまいであるのが印象的で、オフィスからはキャンプ場でキャンプをしている人たちが見えますし、ブラインドを上げていれば逆もしかり。商品を買いに来るお客さんも来ますし、自社商品をオフィスで使ったりキャンプ場で試しながら、商品開発ができるようになっている、現場に限りなく近い仕事環境です。



そんなスノーピークは年に数回キャンプイベントを行い、そこで焚火を囲みユーザーである人と語り合うことで、何を求めているのか気づきを得たり、ファンがファンを呼び込む仕組みをつくっています。appleの様にマーケティングはやらないということですが、この取り組み自体が現代版のマーケティングであり、前に書いた21世紀の資源はユーザーであるという考え方にも通じます。社員が徹底したユーザーになりきれれば、商品も妥協なく本当に欲しいものが開発できるようになるので、会議でのレビューも社内理論の話ではなく、1ユーザーとしての目で厳しくも本質を捉えたチェック機能が働くようになります。

一方でビジネス視点では論理性を重視していて、流通や店舗展開の戦略や、どのようなターゲットにフォーカスして、データに基づいて対策を打つ、ということを行っています。感性と論理性のどちらかが偏るのではなく両方とも大事にしていて、使い分けをビジネスの中で実践しているという点でとても参考になる取組みです。この流れは、最近では、星野リゾートや中川政七商店のような新しいファミリービジネスで活躍している会社に共通するものを感じます。



このように徹底したユーザー視点を貫きながらもビジネスとして成立させているスノーピークに見習う点はたくさんあります。訪問した日の前日、僕は大学でUXとビジネスについて実践例を交えて話をしてきたのですが、正直なところスノーピークと比べるとユーザー視点の徹底さはまだまだです。目指すべき目標があるのはとても幸せなことなので、1人のユーザーとしても今後の取り組みを注目していきたいと思います。

ちなみに、せっかく現地に行ったので、長いこと使い続けている僕のコーヒーのフレンチプレスのボロボロになったフィルターだけを購入することができるか聞いてみたところ、使っている商品を店舗に持ち込んでもらえればフィルター部分を交換してくれる、ということでした。ユーザー視点が徹底していることがよく表れています。僕の中でのファン度がちょっと高まりました。
  • ?±??G???g???[?d????u?b?N?}?[?N???A