クリエイターとディレクター:すべての仕事はクリエイティブディレクションである

公開日: 2017年8月25日金曜日 クリエイティブ コミュニケーション デザイン ヒト

広告代理店の人が書いた本です。以前に何冊か広告系の人の本を取り上げましたが、彼らのクリエイティブディレクションという領域にの関心を持っています。僕はプロダクトデザイン出身ですが、同じクリエイティブ系でもやっていることや視点がまるっきり違うので、以前は違う業界だからと思って気にしてなかったのですが、気づいたら最近は自分のやってることがこっちよりになっていたので、自然と気にするようになりました。



すべての仕事はクリエイティブディレクションである
古川裕也
宣伝会議 2015.09

一言でいうと、とてもいい本です。僕も含めクリエイティブディレクタ―って何をする人たちなのかよく知らない、という人が多いと思いますが、どういったことをやって、何を常に意識して考えているのかがまとまっている本です。何となく本書を通じて著者の誠実な人柄も感じます。何となく業界っぽい印象のある広告業界ですが、こんな風に誠実に書かれると、偏見のメガネを外して、ちゃんと向き合おうという気持ちにさせてくれます。

今までよくわからなかったのは、僕自身はモノのかたちをつくるデザイナーだったので、自分でモックアップをつくったり図面を書いたりしていましたが、クリエイティブディレクターは自身が直接手を動かすのではなく、チームを率いて全体を動かすという役割だということです。スタンスが全然違うので、以前はどうしても自分自身で手を動かさないクリエイティブという位置づけが理解できていませんでした。

でも今は前よりは理解できます。あらゆるものは自分ひとりだけではできないので、お互いの力を助け合ってつくる必要があります。工業製品であれ建築であれ広告であれ同じことです。そうしたときに先導する存在がクリエイティブを重視することによって、個々人がやっていることの価値を最大限に発揮することができる、それがクリエイティブディレクターの仕事なんだと解釈しています。

こう整理するとデザイン思考で語られる文脈とかなり共通する点が多くあります。デザイン思考も多様性を尊重し共に創り上げることが語られてますが、結果そういった取組みを推進する役割を担うとクリエイティブディレクションをする、ということになるのだと思います。なので今、広告業界から学べることはとても多くあると思います。



肝心の本書の内容について触れておくと、クリエイティブディレクターはチームに対して無駄な悩み方をなくす(悩み方をディレクションする)ことや、そのためのプロセスとしてどうゴールイメージを設定するとともにアウトプットの品質を保つための視点など、ディレクターとしてのクリエイティブのあり方が丁寧に説明されています。考えだけではなく、『祝!九州』や『牛乳に相談だ』などの有名な広告の実例も交えて紹介されているので説得力があります。詳しくはメモを見て、気になった方は本書を読んでみてください。

クリエイティブディレクターの仕事は突き詰めると「課題を規定し、それを解決するアイデアを考え、実行して達成する」という流れですが、これ自体はどの業界のどの仕事でも当てはまることから、本書の名前がこんな風になっています。近いのは映画監督だったりオーケストラの指揮者なのかと思いますが、日々の仕事にも役立てられそうです。プロジェクトでチームを動かすときは、リーダーでなくても意識しておくことで、チーム全体のクリエイティブ力を高めることができる、かも?
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