具体的で実行可能であること:ビジネスモデルイノベーション

公開日: 2017年9月1日金曜日 ビジネス

数年前にビジネスモデルをデザインするということに関心を持つきっかけがありました。あるサービスのアイデアを提案したところ「ニーズはありそうだけど、ビジネスモデルがすぐマネされそう」と言われ、それはビジネス側の人が考えるものだと当時は思っていましたが、製品単体では成り立たない状況において、ビジネスモデルもデザインの対象になると考えかたが変わりました。そんな中、会社の本棚に置かれていたタイトルが気になって読んでみました。



ビジネスモデルイノベーション
野中郁次郎、徳岡晃一郎
東洋経済 2012.08

2008年のリーマンショックを境に、ビジネスの在り方が変わってきたといわれています。サブプライムローンの出来事は一部の高所得者のエゴや行き過ぎた資本主義を象徴していました。そういったことから共通善のありかたや主観を排除した論理思考のビジネスでまわる社会を疑問視するようになり、社会的な視座でものごとを捉える、新しいビジネスモデルが求められるようになりました。

つまり売れるための仕組みをつくるためのビジネスモデルという考えではない、ということが2008年までと大きく変わった点です。同時に、よくいわれる不確実性の高い時代であったり、製品単体ではなくシステムやプラットフォームで考えることが重要になっていく中、既存のビジネスモデルを踏襲するだけでは事業を継続することは難しいため、ビジネスモデルにイノベーションが求められている、というのが本書のポイントかと思います。

本書は複数の著者が色々な視点からビジネスモデルイノベーションの取組み方を紹介していますが、個人的に一番面白かったのは、経済学者の野中郁次郎氏と日産のカルロスゴーン氏の対談です。日産が不況から立ち直ったリバイラルプランは有名ですが、それをどうやって実現したか、今に至るまでどう事業を継続させていけるかということが実践知として語られています。

ビジョンとはビックピクチャーを描くことであるけど、夢ものがたりではなく実行可能で結果を出せるものでなければいけないということが印象的でした。例えば今でこそ当たり前な環境問題を、日産では20年後のスタンダードとして描いていました。環境問題というとCSRの域を出なかったりキレイごとになりがちですが。実行可能なビジネスとして捉え、石油の過度な依存や新興国の経済発展から、電気自動車へのシフトというように戦略的かつ経済に帰結するものとして捉えていました。


あるべき姿を考えるデザイン思考ワークショップでは、よく抽象的な言葉で終わってしまいがちですが、ストラテジストはあいまいなままではなく具体的で実行可能な方法にまで落とし込んで、ビジネス戦略に結び付けることが役割なのだと思います。デザイナー側がビジネスモデルに落とし込むこと(ただビジネスモデルキャンバスを埋めるのではなく)の方法論はまだ確立されていないと思うので、これからじっくり考えていきたいと思います。
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