心の通ったマーケティングを:心脳マーケティング

公開日: 2017年9月2日土曜日 マーケティング メソッド リサーチ

前にThe Futureのセミナーを受けた藤川先生が翻訳された本です。この本は2005年と、僕が読んだ2017年から10年以上も前の本なので、マーケティングやユーザーの思考プロセスの考え方について、もう既に浸透している考えもあるとは思いますが、改めて基礎を理解しておく意味でも参考になる本だと思いました。



心脳マーケティング 顧客の無意識を解き明かす
ジェラルド・ザルトマン (著), 藤川 佳則 (翻訳), 阿久津 聡 (翻訳)
ダイヤモンド社 2005.02

本書のキモはZMETと呼ばれるヒアリング調査方法なのですが、これは僕自身が試してみて実感してみないことには分からないので、ここではサラッとまとめておきます。ZMETとはZaltman Metaphor Elicitation Techniqueの略で、インタビューの中でメタファーを用いた対話をすることによって、言葉以上の認知思考を引き出す手法のようです。この考えの背景にあるのは、人は思った通りのことを話すわけではなく、無意識や非言語など表れない部分や考えの方が大部分を占めており(よく氷山の絵を用いたイラストで説明されるあれです)会話の言葉だけでは顕在的なことしか得られないため、メタファーを用いることによって潜在意識を引き出す、というのが基本的な考えになっています。

この手法は主にインタビューで使われるものなので、適切なメタファーの提示の仕方や、そのメタファーを通じて話してくれる意見の意図をどうくみ取るかなど、会話や分析のスキルを磨くためには、場数を踏んだトレーニングが必要になりそうです。日本語はメタファーを意識しなくても比喩的な表現は日常的に使われるので(気分が上向きという表現でさえも日本語ではムードを可視化するメタファーになる)もしかすると英語圏に比べて用途の機会が違うのかもしれませんが、会話に詰まったときに用いるのは有効そうな気がします。覚えておいて今度使ってみようと思います。



僕があらためてためになったのは、始めの章に書かれていた「マーケティングの6つの誤り」という項目です。ここでいうマーケティングとは20世紀型のマスマーケティングを指していて、現代のマーケティングの認識はだいぶ変わっているとは思いますが、まだ世の中的には認識ズレがあると思うので、大事だからテキストでも書いておきたいと思います。

1.消費者の思考プロセスは合理的で直感的(ではない)
2.消費者は自らの思考プロセスと行動を説明できる(はずがない)
3.心・脳・体・文化・社会は独立した事象で扱える(わけがない)
4.消費者の記憶には経験が正確に表れる(ほど立派な人はいない)
5.消費者は言葉で考える(と思っているのはマーケターだけ)
6.消費者はマーケターの思った通りのメッセージを解釈する(と信じたい)

1~6をまとめると「人はそれほど単純ではないよ」ということだと思います。ですが、それに対して明確な手法があるわけではありません。ZMETもその一つかとは思いますが、このフレームワークを使ってこうやったら必ず導きだせる、というものではありません。なのでZMETにはスキルが大事なんだと思います。そもそもロジカルな思考ではない人に対してロジカルな手法で導くことは理論的でないです。この本のタイトル和訳が心脳(現代はHow Customer Thinkとシンプル)になっているのは、そういうところを反映しているのかもと思います。
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