戦略とは違うようにすること:なぜ「戦略」で差がつくのか。―

公開日: 2017年9月3日日曜日 マーケティング リサーチ

マーケティングの名門であるP&Gはすごい人がたくさん出ています。過去に紹介したUSJの森岡さんやデザイン思考を実践する佐宗さんは、マーケティング出身でありながらも僕のデザインの取組みに大きな影響を与えた人ですが、この本もP&G出身の方です。(ちなみに佐宗さんのSNSの投稿でこの本のことを知りました)かつ書籍名に「戦略」が入っているので、僕にとっては必然的に読むべき本でした(出版日から半年くらい経ってしまってますが...)



なぜ「戦略」で差がつくのか。―戦略思考でマーケティングは強くなる
音部大輔
宣伝会議 2017.03

戦略の重要さについては、これまでも何度か別の戦略系の本を通じて書いてきましたが、この本に書かれている戦略を一言で表すと、

目的と資源を見極めること

です。(もちろんそんな簡単に集約できるものではないので、正しく理解するためにはちゃんと読むのをお勧めします)達成すべき目的があるけど、達成するための資源には限りがあるので、適切な設定と使い方を考える必要があります。仮に資源が潤沢にあったり競合がまったくいなかったら戦略は必要ではないのかもしれませんが、そんな状況はまずないので戦略は不可欠といえます。本書では、目的とは?資源とは?について、事例を交えながら細かく説明がされています。



ただ戦略はそれだけではなく、実行を通じて得られる経験値や、意思決定プロセスの体系化による統制にも有効に機能するという視点は、僕はあまり意識していなかったことなので為になりました。下の項目の中の3-4や5-7あがりはなるほどと思いました。社内に戦略の必要性を説明するのに活用できそうです。

1.成功確率が上がる
2.目的のよりよい達成が可能になる
3.いい失敗で経験値を獲得しやすくなる
4.再現性の確保
5.有意識の力(議論が深まる)
6.パニックを防ぐ(考えの一貫性を担保する)
7.自損事故を防ぐ
8.意思決定を助ける
9.目的を共有する
10.摩擦を下げる
11.権限委譲を助ける

あと戦略的な考え方とは?ということについての考察も興味深かったです。やみくもにいろんな方法を試すのでは確率が低い(=資源を無駄に使ってしまう)ので、目的と資源を再解釈して、何が本当の問題で何が資源になりうるのか、ということを理解する必要性を説いています。これはストラテジストとしては基本的な姿勢であるのだろうけど、一方でクリエイティブ的な取組みでは、案ずるより生むを重視することも多くあるので、使い分けは意識しておく必要があるなと思いました。

最後に一番勇気づけられた言葉を1つ紹介します。

「戦略とは違うことをするか、違うようにするかである」

ビジネスの中では違うことに対するリスクや論拠が当然求めれられるので、それを気にしすぎると、いつの間にか他と同じような方向になっている、ということがよくあります。でもこの言葉が持つ意味は『違うことをしない=戦略がないビジネス』であって、戦略で差をつけるためには、違うことに対して自信をもって取組むべき、ということを教えてくれました。クリエイティブな取組みは他と違うものをつくるのが当然ですし、デザインストラテジーは違うことの価値と説得性を高めるための方法でもあると思うので、この言葉は自分の背中を押してくれる一言でした。
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