指数関数的な感覚を持つこと:シンギュラリティは近い

公開日: 2017年10月31日火曜日 ソーシャル テクノロジー

この本はぶっ飛んでます。はじめはシンギュラリティとは何か?という話から入りますが、それでどう変わっていくかという話の次元が先を行き過ぎていて、自分の理解がまったく追いつきません。例えば、人間が非生物になっていくとか、宇宙が覚醒するとか。(そういえばInnovation City Forumでも宇宙の話が出てきました…)でも、そこで分からないとあきらめるのは悔しいので、何度も読み返していたのですが、そのうち、理解するための1つの気づきがありましたので、ここではそれを書こうと思います。



シンギュラリティは近い
レイ・カーツワイル
NHK出版 2016.04

最近よく聞く「シンギュラリティ」日本語では「技術的特異点」と訳されますが、シンギュラリティで注目すべき1つのポイントは、進化のスピードの感覚の違いです。私たちがふつう考えるスピード『線形的』で、同じ速度で進んでいく感じです。これに対して、いま世の中で起こっている進化は指数(〇乗とかのあれ)で進んでいく『指数関数的』であるということです。数字で表すと

・線形的:2-3-4-5-6-7
・指数関数的:2-4-16-256-65536-4294867296

同じ6この数でも、これだけの違いがあります。65536あたりから自分の頭では何かもう手に負えない数になってきた感がありますが、人間を超える境界値にあたるのが技術的特異点であり、そこを超えるともう次元の違う世界に入ってしまうということです。

超えた先のことを想像するのは難しいです。(なぜなら既存の延長上の進化スピードではないので)本書では2020年代後半くらいから人体の進化として、食事方法、寿命、臓器や心臓の入れ替え、非生物が知識を持つ、ということを挙げています。何回読んでも僕の頭の中には???満載でした。SFとかのレベルを超えています。

ここで大事なのが、さっきあげた指数関数と時間軸に対する感覚です。歴史を振り返って考えると想像しやすいのですが、生命体が生まれてから(縄文時代からではないです。カンブリア紀とか地球が誕生したときからです)人が誕生して文明を持ち現代にいたるまでの進化を時間軸で表してみると、それは線形的でなくて指数関数的なことが分かります。数字で表すと(正確な年数はわからないので桁だけでざっくりです)きっとこんな感じです。

・生命~人類:x00,000,000年
・人類~文明:x000年
・文明~産業:x00年
・産業~情報:x0年

個人的な体験ですが、中学校のときに歴史の先生が最初の授業で、黒板いっぱいに線を何行も書いた最後に1cmだけ別の色で書いて、これから勉強するのは全体の中でこのわずか1cm(2000年)だけの範囲なんだよだということを教えてくれました。これは僕にとって今でも強く印象に残っているのですが、まさにこれが、指数関数的な感覚なんだということです。この感覚を持てるかどうかが、これからの飛躍的な進化を想像できるかどうかということにつながるのだと思います。貴重な学びをありがとうございます、先生。


AIによって未来がどうなっていくのかは、多くの人が関心を持っていて、同時に漠然とした不安を持っていますが、それを知るためには知識よりも、まずは指数関数的な感覚を持っておくことが大事なのではないだろうか、ということに気づきました。そうすれば、そのうち「宇宙が覚醒」とかの意味も分かるようになるかも...いや、それが分かるのは人間ではなく無生物が理解することなのかもしれませんけど。

という感想でしたが、これで終わらせるのは抽象的すぎるので、今回はもう1つの本を紹介します。マンガです。山下和美さんが描いている「ランド」という現在も連載中のマンガです。(山下和美さんは『天才柳沢教授の生活』の作者としてもおなじみですね)

このマンガはすごいです。『シンギュラリティは近い』に並ぶほどの世界観が表れている作品で、AKIRAに匹敵するほどのスケール感です。舞台は昔の平安時代くらいの日本で(実はそれだけではないのですが)ある少女を中心に物語が繰り広げられますが、全体観としては文明がテーマになっているお話しです(あくまでも私見です)。ネタバレになるので細かくは書きませんが、5巻では文字にまつわるやりとりがあり、書くという文明を手に入れることで、これまでずっと長い間会話だけでやりとりしていた社会がどう劇的に変わるか(時代の転換点)ということが体感的に伝わります。



『シンギュラリティは近い』は単体で理解するのがかなり困難なのですが、『ランド』と合わせて読むことによって、スケール感・指数関数的な感覚・時代が変化する空気感を、具体的にイメージすることができるようになれます。僕が読んだタイミングは偶然なのですが結果としてお互いの理解が深まりました。なので、僕としては2つを一緒に読むことをお勧めします。
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