CSVとCSRとは全然ちがう:CSV時代のイノベーション戦略

公開日: 2017年11月21日火曜日 ソーシャル マーケティング

実は前に受けたセミナーを聞くまで、僕はCSRとCSVの違いをあまりよくわかっていませんでしたが、同じような状況の人はきっとたくさんいると思います。なので、その違いを伝えることができれば、今回の投稿は十分な役割を果たせているかなと思います。そして、それが何なのかを具体的に知るために、今回紹介する本はとても分かりやすくおススメです。



CSV時代のイノベーション戦略
藤井剛
ファーストプレス 2014.07

まず本題のCSVとCSRの違いについて説明します。略称のCSが一緒なので似たようなものと勘違いしてしまいますが、実は単語がすべて違います。

・CSV=Creating Shared Value(社会共通の価値創造)
・CSR=Corporate Social Responsibility(企業の社会的責任)

対比でおおざっぱに違いを書いてしまうと

・CSV:営利活動(社会課題を市場と捉えてビジネスする)
・CSR:非営利活動(利益をビジネス以外の領域に還元する)

という感じです。もちろんCSVは金儲け主義一辺倒ではないので、上の表現はちょっと誤解がある書き方かもしれませんが、CSRとは明確に違うことを理解するためにも、まずはこのくらいの認識をするくらいで、ちょうどよいのかなと思います。

次に何が今までのビジネスと違うのかということについて書きます。CSVの代表的な一例として『糖分の高い食品・飲料を製造していたメーカーが、肥満を解消するための取組みとして健康食品を提供している』という取組みがあります。これのどこが新しいかというと、目先にある売上ではなく社会にとって好ましい循環の仕組みを自らがつくり、今まで注目していなかった領域に新しい市場をつくった(高カロリーは美味しいから売れる→健康食にこそお金を使うべき)という視点を変えているところが注目すべき点です。

ノートメモの右上の図がその説明にあたるのですが、一般的に企業が考えるビジネス領域の範囲は、既存事業とその周辺の中で市場を開拓しようとします。ビジネスフレームワークでいうところのアンゾフの成長マトリクスが相当します。ですがその隣には会社の視点を超えた社会の価値観というものが存在している(枠でいうと5マス)というのが、新しい市場機会になります。これがCSVをビジネスとして捉える必要がある大きな理由です。



では、社会課題に注目して商品やサービスをつくれば、どの会社でも収益を拡大できるのかと、そうは簡単にはいきません。そこにはストラテジーが重要になります。CSVで成功している会社には↓のような図式に基づいているということです。

CSVでの成功 = 大義力 x ルール x 再現力

・大義力:社会課題解決への意思を示すことで人々の共感を得る
・ルール:プラットフォームをつくり、その市場の主導権を握る
・再現力:組織の文化として定着させ、まわる仕組みを持つ

どれも新しく大切な視点ですが、僕は特に『ルールをつくる』という点がポイントだと考えています。ここでのルールとは例えば、認定マークや数値化をするとか、人々の共通理解の考えをつくるとか方法は様々ですが、日本企業はこのルールづくりが弱い傾向があります。例えばISOであったり、スポーツの審判基準だったり、プラットフォームだったり、こういったルールの多くは欧米が手掛けていますし、Amazon, Google,airbnbなど、北米の多くの企業がサービスのルールをつくって定着させていくことで主導権を握っています。

そんな状況においてCSVをCSRの延長と考えているうちは、日本企業は海外企業に対して先駆けたビジネスをすることは不可能です。CSVは会社のどの部門であっても認識すべき戦略の1つだということを強く思いましたし、デザインのストラテジーを考えていくうえで、ユーザーの深い共感を得るためにCSVの視点は欠かせないということを本書から学びました。

ちなみに最近では、国連がSDGsという世界で解決すべき社会課題を掲げたり、それに向けて企業や団体が具体的に取組んでいく活動も公開されています。ここに参加している企業はすでにその価値に気づいているのではないかな?と思われます。
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