認識の8割は間違ってるかも:逆説のスタートアップ思考

公開日: 2017年12月9日土曜日 クリエイティブ ビジネス メソッド

今年になって、企業のエバンジェリストの話を聞く機会が増えてきたのですが、エバンジェリスト=伝道師なだけあって、もう、話が分かりやすくて感心するばかりです。その中でマイクロソフトのエバンジェリストは有名ですが、著者の馬田さんは元マイクロソフトで(今は大学にいるようです)、2年くらい前、まだ在籍中のときにDesign Sprintの話を聞いたことがありますが、やはり分かりやすかったので僕は簡単に影響を受けました。そんな馬田さんの本なので、もちろんすごくわかりやすいし面白いです。



逆説のスタートアップ思考
馬田隆明
中央公論新社 2017.03

本書はスタートアップとはどういうことか、について分かりやすく書かれている本ですが、それだけではなくて、一般的に捉えていることと反対の視点(逆説)を強調した内容で、面白いだけでなく刺激もあります。この切り口がエバンジェリストとしての腕の見せ所なんでしょうね。まずはじめに、スタートアップとスモールビジネスの違いを説明しています。比較すると

・スモールビジネス:小さく着実に伸びていく
・スタートアップ:短期的に一気にスケール(指数関数的に)

と、小さな事業や起業がすべてスタートアップなわけではなく、すべての会社がスタートアップを目指す必要はないということです。そのくらいスタートアップは一般的な認知よりもう少し特別なビジネス活動です。そのビジネスを実践していくために本書では大きく3+1のテーマで逆説を主張しています。

1.アイデアの逆説

良いアイデアとは何か?を判断することは難しいですが、みんなが賛成するアイデアは実はよいアイデアではないということは、デザイナーにとっては割と共感できる逆説です。そのうえでなるほどと思ったのは、難しい課題ほど簡単いなる=競合がいないし優秀な人が集まりやすいという視点も、あまり意識してなかった逆説です。

もう1つ、これはデザイナーでもあまり意識しないことですが、スタートアップでのアイデアはヒットでなくホームランを狙わないといけないということ。スタートアップの規模は小さいので、他が追従できないよう、べき乗則的に伸びるアイデアでないといけないということです。面白いだけでアイデアを評価するのではなく、伸びるかどうかという視点で見ることは大切ですね。

2.戦略の逆説

ここの逆説は明確です。箇条書きに書くと

・小さな市場から
・すばやく独占して
・その状態を長く維持する

僕が思った特に大事なのは、2つ目の『すばやく独占』です。ゆっくりでそこそこのシェア、ではダメで、競争をしていたらその時点で負けだということです。世の中の事例を思い浮かべてみると、facebook, times car plus, airbnbなど、競合はいることはいますが、競い合っている感じではなくてどれも独走していますね。アイデアのところでも書きましたが、べき乗則的にのびて追従させないためのアイデアであり戦略を持っていくことが必要です。

また、これも考えてみればその通りですが、先行者ではなく終盤を制することが大事、という逆説です。上にあげた会社も一番早かったから成功したわけではなく、スケールの仕方が大きく速くできたからです。新しいことに取組もうとすると一番風呂に入ることを急かす人がいますが、それには惑わされないことが大事ですね。



3.プロダクトの逆説

上に書いたことと矛盾するようですが、プロダクトはすぐにスケールしないことが大事という逆説です。どういうことかというと、広く浅く受け入れられるものは競合が参入しやすく、ユーザーも特別な思い入れを持たないのですぐに離れてしまいます。その逆として、まず少数の人に強く愛されることを目指すべきということです。イノベーター理論に基づいた、まずは一部の愛好者から始まると、ある時を境に一気にスケールするのはiPhoneなどの事例を見ると明らかです。

また今の時代、プロダクトは永遠に解決しないものです。ソフトウェアのアップデートはもちろんのこと、先にあげたiPhoneであっても進化を続けています。そこで続けていくためには、失敗をはやく見つけて改善を繰り返していくことで、これは冒頭にあげたDesign Sprintに通じるものです。

+1.運

スタートアップでは運も大切になるということですが、天任せではなく、ある程度の運はコントロールはできるという逆説です。へーと思ったのが、成功した人たちは、会社をやめてから始めるより、会社に勤めながら企業をした人の方が多いということです。安全網やタイミングを見極めるためにも、えいやで崖から飛び降りるのではなく、慎重に進めることで成功する運の確率を高めることができる、ということです。

というようなことが本書の全体の内容です。きっと馬田さんがプレゼンで説明していることを、本にするとこうなったという感じなんだろうなと思います。そのくらいプレゼンを聞いているような感じで楽しく読むことができました。内容ももちろん面白かったのですが、それ以上に人への伝え方のテクニックに感心しました。このブログももう少し、簡潔に人に伝わる書き方ができるようになりたいです。
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