トレードオフの関係を崩す:ブルー・オーシャン戦略

公開日: 2017年12月2日土曜日 ビジネス マーケティング メソッド

たぶん既にほとんどの人が、ブルーオーシャン戦略の意味は知っているかと思います。これだけ一般的に浸透しているビジネス戦略の用語は他にあまりないんじゃないでしょうか。ファイブ・フォースとかよりよっぽど認知率は高いと思います。それはエンドユーザー視点だったりわかりやすい理論であるからですが、単に新しいことというだけの意味でこの言葉が使われている場合もあります。なので改めて正しく理解しておく必要があると思い、読んでみました。この本は10年前くらいに読みましたが(その当時はまったくこういった分野に興味なかったのだけど、今ストラテジーに興味を持っているのはこの本の影響?)今回は新版ということで、新たな解釈や説明も加わっています。



[新版]ブルー・オーシャン戦略―――競争のない世界を創造する
W・チャン・キム、レネ・モボルニュ 有賀裕子(翻訳)入山章栄(監訳)
ダイヤモンド社 2015.09

まず基本的な定義の概念ですが、20世紀の競争戦略から、競合とはまったく違うレイヤー(例えば同じ商品群でもターゲット層が違うなど)市場を再構築する21世紀型へのシフトが、このブルーオーシャン戦略です。ですが、ポイントは以下が大きな特徴です。ここを理解している人はそれほど多くないのではないでようか?

・質とコストのトレードオフの関係を崩す
・安いけど質が高い

こんなことできるのか?と思いますよね。世の中の多くのビジネスは、高くて質が良いものか、安くて質はそこそこか、というすみわけで成り立っています。ブルーオーシャン戦略は、この枠から脱却できるかがどうかがポイントなので、単に新しいからという意味ではないし、簡単ではないことが分かります。

日本での事例も多く取り上げられていますが、上の例を説明するのに代表的なのはQBハウスです。美容業界はそれまで質と価格のポジションで成り立っていましたが、QBハウスは安いけど決してカットの腕が悪いわけではありません。他のサービス(シャンプー、髭剃り、または予約など)が不要と思っている層に対して、大胆にもそれをなくして一点集中にフォーカスしています。理解しておくべきことは、全体を見ての質ではなく(それだとQBハウスの質は低い)顧客が必要と思う範囲の中での質の高さと価格で価値を上げていることです。

他にも任天堂wiiも好例として取り上げられていますが、この本でwiiの成功要因としてあげているのは、ギークな層からリビングに市場を映しただけではなく、新しい技術を先駆けて取り入れたり、その分野で圧倒的な地位と認知率を持つためのプロモーションやブランド戦略に力を入れていることを強調しています。ブルーオーシャンの初版が出たときに、この戦略は容易にマネされるといった指摘を受けたことから、他が参入しにくいブルーの状態を保つための解説も丁寧に書かれています。



マーケティングの歴史をたどると、少し前の1980-90年代にマイケル・ポーターが提唱したファイブフォースやバリューチェーンなどの企業視点から見た戦略に対して、2000年以降はより顧客視点で捉えた考え方が重視されるようになってきました。ブルーオーシャン戦略はその中から出てきた考え方、ということもできます。ざっくり簡単にまとめてしまうと、ユーザー起点でものごとを考えるUXデザイナーなどにとってブルーオーシャン戦略は相性が良いです。(今はプラットフォームやデータ活用など、また企業側やテクノロジーの活用といった、デザイナーにとっては少し難しい位置づけになっていると思いますが)

なので、もしデザイナーが何か面白いアイデアを思いついたときに、その次のステップとして、このアイデアのどんなところが素晴らしいのかを説明するときにブルーオーシャン戦略のフレームワークなどを活用できれば、デザインストラテジーとして説得力を高めることができると思いました。本質的ではないかもだけど、こういった使えそうな考え方を集めておくと、デザインストラテジーのツールになれるかもです。
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