理論より理念が大事:生きた戦略の条件

公開日: 2017年12月25日月曜日 ビジネス

複数の会社のトップとなり経営を実践してきた人の本です。経営学の本とかを読んでいると、理論で分かったつもりになったり、自分でもできそうな気になる勘違いをすることがありますが、そういった頭でっかちになりがちな人(僕)に対して、実践の視点で怒ってくれるような熱い本です。



生きた戦略の条件
新将命
KADOKAWA 2015.02

本の中では、まず冒頭に『不易流行』という言葉をあげています。不易は変わらないもの、流行は変わるもの。変化に対応していくことは今の時代とくに大切だけど、流行りものに振り回されるのはよくないことです。そこでこの『不易』にあたる原理原則(英語だとConstant)あるいは理念が大切になります。迷ったときに戻れるのが理念で、不確実性が高い時代だからこそ、目先の現象に一喜一憂するのではなく、その対象を理念と照らし合わせてどうとらえるか、という考えが必要ということです。印象として『流行』の比重の方が高い会社が日本では多いような気がします。

そのうえで『生きた戦略』として(机上の空論でなく人が介在する実践として)戦略と戦術の関係性や、具体的な指標を掲げています。いくつかの内容は定石といえるビジネスフレームワークに近いものも出てきますが、『理念』と『生きた戦略』の重みをうけたあとに読むと、必要性がぐっと濃く見えてくるようになります。印象的なのは、戦略には必ず人が関わっているので、理論だけでなく感情も意識しながら取り組むべきだということです。僕が個人的にいいなと思ったのは次の2つです。ATMのイメージが変わります。

・T:正しい戦略を
・T:徹底的に
・K:継続的に

・A:明るく
・T:楽しく
・M:前向きに



あと、本書の中には、数々の偉人の言葉が引用されているのですが、これがどれもグッときます。例えば...

『戦略なき戦術は無意味、戦術なき戦略は役立たず』(Morris Chang)

『人は理論で説得され、感情と利害によって動く』(Colonel Sanders)

『桶狭間の合戦で一番の功績者は敵の様子を報告した者」(織田信長)

特にケンタッキーのカーネルおじさんの言葉にグッときました。理屈だけでは伝わったような気になったとしても物事は動かない、そこには気持ちが必要で、この2つを両立させることはとても大切ですし、デザイン戦略という、Emotionalな要素とLogicalな要素を2つが必要となるこの領域においては、とても深い言葉です。ありがとうカーネルおじさん。

というように熱い心が伝わる本でしたが、もちろんそれをどう実践で落としていくかの内容も丁寧に書かれているので、理念や戦略だけで満足せず戦術も両立させる、いろいろな視点から片手落ちにならないように意識することを学んだ気がします。
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