事例ベースで理解するビジネスモデルパターン

公開日: 2017年12月26日火曜日 ビジネス マーケティング

たまに会社のなかで勉強会をする機会があるのですが、そこで僕が取り上げているテーマは会社に閉じた目的ではなく、個人的な関心を他の人に共有している取組みなので、ここにも書きまとめておくことにしました。今回は『デザインのためにが知っておくべきビジネスモデルパターン』というテーマです。ビジネスモデルというと固い印象ですが、なるべく面白くまとめてみたつもりです。

イントロ

まずはじめに、世の中のサービスはアイデアとビジネスモデルの両方が必要だと考えます。デザイナーはユニークなアイデアを考えるのは得意ですが、ビジネスモデルにまで関与する機会はあまりありません。一例としてスマートロックを取り上げると、このアイデアは、貸し会議室やホテルなどのビジネスシーンや、個人宅でもハウスキーピングや宅配に対する限定的な個人認証、といった領域においてビジネスが拡大しています(北米では普及率が日本より高い要因の1つ)。つまりキーが電子化されるだけではサービスの価値にならず、用途やシーンにおいてお金を払う需要がある、ということまでを考える必要があります。下の会社の動画が分かりやすいと思います。

米国で人気のスマートロック「August(オーガスト)」の特徴について
http://スマートロックランキング.net/brand/augustsmartlock/

デザイナーはユーザー視点にたってサービスの魅力度を直感的に捉えられる鋭さを持っている職種だと思いますが、一方でピュアすぎることがネックだと思います。良いアイデアはマネされないと考えています(少なくとも多くのデザイナーはオリジナリティを重視するので真似はしたくないと思ってる)でも、世の中には多くの模倣が存在します。例えば「赤いきつね」「緑のたぬき」と「どん兵衛」は常に並んでいて、ビジネスモデルでは同質化戦略というらしいです。なのでデザイナーがビジネスモデルまでを考えるときは、マネされにくく気づかれにくい視点を持つことが大事かと思います。

ビジネスモデルを可視化・構造化する手段として『ビジネスモデルキャンバス』や『ピクト図解』などがあります。これらはツールとして優れていますが、これを書いたからといって鋭いビジネスモデルがつくれるわけではない、ということは意識しておく必要があります。(否定しているわけではなく、ツールの使い方を見定めようという話です)テンプレートの枠を埋めることに苦心するよりは、競合や他の会社とは何が違うか?という1点に注力して、強みを考えることの方が大切かなと思います。

前置きが長くなりましたが、僕が考えるデザイナーにとってのビジネスモデルは、構造化や分析をするよりも、世の中の多くの事例を知っておいて違いをつくるための引き出しを持っておくことが重要と捉え、ここでは事例とパターンで理解することを目的としました。以下に3つ事例をまとめていますが、特に『デザイナーとの接点が強い×デジタルとの関係性が深い』という点にフォーカスして、自分なりの考えをまとめてみました。

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01.ユーザーに着目する x USJ



本で読んだ内容をもとに事例紹介します。デザイナーにとってユーザーが誰かを定義するのは基本なので、これがビジネスモデル?というツッコミはありますが、ビジネス視点ではB2BからB2Cに移行したことで大きく構造を変えた例がいくつもあります。その好例としてUSJを事例に取り上げます。前にUSJの取組みに関する本はいくつか紹介しましたが、ユーザー設定がいかに大切かということが書かれていました。CMOだった森岡さん(今は退職して会社を設立したそうです)が参画する以前、USJは映画ファンをターゲットユーザーにしていましたが、その後の戦略では映画にこだわらず、家族を対象として幅広いコンテンツを取り扱うことで売上を伸ばしたということです。USJの競合はディズニーランドでニッチなテーマパークではありません。ですが映画ファンに絞ると来場客が限られるため実は事業規模と合っていなかった、というのが本に書かれていたことです。

この事例からは、ユーザーに着目するという非常に基本で簡単なことがいかにビジネスを大きく左右するか、が分かります。そしてユーザー視点でものごとを考えられるのはデザイナーにとっての強みです。なので、企画段階でデザイナーは、ターゲットユーザーの定義に対してもっと関与することができるのではないでしょうか。もちろん、直感だけでなく根拠までを示す必要はありますが、そこに気づけるかどうかは誰でもできることではないと思っています。

02.プラットフォームをつくる x BOOK OFF



セミナーで聞いた話の紹介です。BOOK OFFが他の古本屋と大きく違うのは、買う人と同じくらい売る人がいるということです。そうするとBOOK OFFに置かれる本が新陳代謝して、常に新しいものがあるから、それを買いに来る人がいて、また売りに来る人がいる、というユーザー側の循環モデルができている、ということです。プラットフォームというとSNSなどがイメージしやすいですが、それ以外の業界でも、多くのユーザーを取り込んで、ユーザーが自発的に動いてくれる仕組みがつくれるかどうか、がこのビジネスモデルのポイントといえそうです。

で、デザイナーにとって関係が強いのは、ユーザーにどう興味を持ってもらって、インタラクティブ性と継続性のUXをつくれるかだと思います。言いかえると、1人ではなく多くの人が関わってくれそうなジャーニーマップを描くことができると、それ自身がビジネスモデルの検討になれているのだと思います。これもデザイナーが得意な領域です。

03.データをビジネスにする x Times Car PLUS



これは僕の経験による感想です。Timesのカーシェアリングを長く使ってますが、よくできた仕組みだとつくづく思います。サービスを利用することで、利用時間帯やユーザーの傾向などデータが取っているので、そこから最適な車の配置やサービス案内などは何となく想像できるかと思いますが、僕が関心したのはユーザーのポイントとステージ設定です。ポイントがたまるとステージが上がるのですが、最近僕はSTAGE2になりました。何とそれによって予約がこれまで2週間前だったのが3週間前になりました。旅行で使う僕にとってはこれは超ありがたいことです。

でこのSTAGEをあげるためには、エコドライブをするとか、前の利用者の状況を伝えるとかでポイントをためていきます。これによってドライバーの質を高めたり、問題ドライバーに警告することができるようになります。さらに感心したのがEラーニングです。オンライン上でこのTimes Car Plusのクイズを受けて学習することで、「こんな隠れサービスもあったんだ」とか「これやっちゃダメなんだ」ということに気づきます。それによってドライバーはサービスを活用したり、違反事項やクレーム案件を減らすことができるようになり、ユーザー側にとっても企業側にとってもよい価値を提供しあっています。Time Car Plus、ほんとうによくできてると関心します。

デジタルやデータとデザインの関係性は今後より大事になってくると思いますが、すでにそれをUX視点で実践しているいい事例だと思います。データ分析といった難しいことではなく、そのデータがユーザーにどういった価値をもたらすか、どういった行動の変化を促すか、という視点で考えると、デザイナーがデータを扱うビジネスモデルを考えられる機会はたくさんあるのではないかと思います。

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以上が僕なりにビジネスモデルとデザインの関係性を考えてみた内容です。ビジネスモデルはアカデミックな場ではなく、実社会の現場で起きていることなので、実学として世の中の事例を通して学んでいきながら発想の引き出しを多く持っておく、ということがデザイナーにとっては重要で、かつ楽しく興味を持てるのではないかなと思い、まとめてみました。
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