書けなくても読めることが大事:これだけ財務諸表
公開日: 2018年1月28日日曜日 ビジネス
プロダクトデザイナーの多くの人は、機構や成型図面を自分で描くことは難しくても、図面を見て問題個所を指摘したり完成状態を見極めることはできたりします。UIデザイナーの多くの人は、ソースコードを自分で書くことはできなくても、コードを読んでサイトの構成を理解することはできます。それと同じように、ビジネスデザイナーにとっては、財務諸表を自分で作成しなかったとしても、財務諸表を見て事業の状況を分析できるのは自然な流れなのかもしれません。と考えると、ストラテジストにとってもこのスキルは避けては通れないなと思うわけで、前に紹介したDDPを少しでもできるように、まずは基本の財務諸表の理解からはじめるべきだと思い、勉強してみました。
これだけ財務諸表
小宮一慶
日本経済新聞出版社(2014.08)
辛かった日商簿記3級を取ったときの知識が役立つときがきました。といっても、もうほぼ忘れてしまったので、また1から教科書(といってもマンガで覚える系のやつです)を読み直しました。集計はもうできないと思うけど、勘定項目や分類は一応覚えているので、それをもとにして読めば、まあ何とかついていける内容でした。
本書では財務諸表の基本3つの読み方を紹介しています。それぞれの存在は僕も知っているけど、これって何を表しているの?をひとことで説明できる整理はしていなかったので、これはわかりやすいです。
・貸借対照表(B/S):会社の安全性を見るもの
・損益計算書(P/L):会社の収益性を見るもの
・キャッシュフロー計算書(C/F):会社の将来性を見るもの
で、ここからは財務・会計に携わっている人だったら当たり前のことばっかりなんでしょうけど、自分の覚え書き的な意味合いも含めて、書いていこうと思います。
でも、これはとても大事なことで、日商簿記など書き方を教えてくれる本や教室などの機会はたくさんあるけど、数字をどうやって見るか?この数値や割合はどういう状態を意味しているのか?ということを教えてくれる機会はなかなかないと思うんです。なので、この本は導入編ではあるけれど、実は貴重な本だといえます。
●損益計算書
損益計算書の項目は大きく、左に-にあたる費用と当期純利益、右は+にあたる収益で構成されています。ちなみに財務諸表の記帳方式は複式簿記なので、左と右で書いた勘定項目の値が一緒になるようにできています。
この中で特に注目するのは売上(収益の部分)です。売上は営業活動によって稼いだお金のことですが(小売りであれば商品が売れた分の金額)ここでは常に売上を起点に他の項目と照らし合わせて、割合や利益額を見ていくことで、会社の収益性=過去数年と比べて儲かっているのか、を見ていくことができるようになります。
●貸借対照表
左に+にあたる資産と、右に-にあたる負債と純資産で構成されています。本の中に書かれている説明がすごくわかりやすかったのですが、資産は運用することで売上高や利益を生むもの(収益の原動力)、それに対して右側の負債は必ず返さないといけないお金、純資産は返さなくてもよいお金、というように整理されています。
で特に注目するのは負債です。負債は返さないとダメなお金なので、これが返せないと会社は倒産になります。具体的には負債の内訳項目の流動負債に対して1年で返せないとアウトです。そういった会社の状態が大丈夫かどうかを見極めるのがこの貸借対照表です。それを分析するために、自己資本比率の計算方法などが本書では紹介されています。
●キャッシュフロー計算書
日商簿記3級ではキャッシュフロー計算書は出てこなかったので、これは僕もはじめての勉強なのですが、簡単にいうと、お金の出入りを知る(ちゃんと売上を回収できているか、利益を投資に充てているか等)ことを見るものとなっています。
メモにしか残していませんが、上にあげた3つの財務諸表に対して、これらの数字を見極めるための計算式がいくつも紹介されています。そこで使われる式や勘定項目は基本のものばかりで、たぶん専門家から見るとこんな簡単でいいのか?と思えるようなもののように見えますが、素人側としてはとても分かりやすいのでありがたいです。ポイントとしては金額よりも割合で見ることによって、標準より上か下か、前年と比べてどうか、という見方をしていくのが大事だそうです。(ポイントは他にもたくさん書かれていましたが、ここでは自分の知識レベルのごく入門の範囲でとどめておきます)
財務諸表はパッと項目と数字だけ見ても、それの何がすごいのかはよくわからないので、分析する視点と方法が必要です。でも簿記は記帳するための方法論であって分析するための計算式は紹介されていません。実際多くの人にとって必要なのは簿記のスキルよりも読めるスキルだと思うので、より身に着けるべき内容だと思いました。こういった資格があったら受けたいな(仕事で役立てられるな)と思いました。