Amazon Go:Amazonのすごい戦略?

公開日: 2018年2月18日日曜日 テクノロジー ビジネス マーケティング

話題のAmazon Goに行ってきました。いまや世界の小売業であるAmazonですが、本社はシアトルにあります。ちなみにSTARBACKS, Microsoft, Boringなどの大企業もシアトルが本社ですし、最近はBiotech系の企業も増えてきているということで、注目が集め続けている都市です。



すでに知っている人も多いと思いますが、Amazon Goは会計をしないで買い物ができる実店舗です。普通の店舗は買い物かごに入れた商品をレジで支払をするという流れですが、Amazon GoはあらかじめスマホアプリにAmazonの会員情報を登録、ゲートにスマホをかざして入り、かごに欲しいものを入れたら、あとはそのまま出るだけという流れです。つまり店員がいなくても成り立つ店舗です。

といった説明はネットでたくさん見ることができますので、ここでは実際にフィールドワークをしてきた感想を書きます。

まず入り口前でスタッフの人からバッグをもらいます。そして入るときにスマホアプリで認証をします。今回ぼくは同行者のIDで入りましたが、もし自分も同行者もAmazon会員でなかったら入ることはできません。入るときが唯一のセキュリティシステムを感じるところです。



入ったらあとは自由です。スーパーやコンビニと同じように欲しいものをバッグに入れていくだけです。話題となったカメラは、一見すると目立たないので気づきませんが、注意深くみると天井や商品棚の奥に何かのセンサーがあるのが分かります。体感としては、ネットで話題になっているほど監視されている感じはありません。いまやどこの場所でも監視カメラはたくさんあるので、データが何に使われているかわからない限りは普通に普及するんじゃないかなと思います。



商品はすべてパッケージされているもので、パッケージされていない野菜や果物などは読み取りができないからか、今は棚に置かれていませんでした。技術が追いつくかすべてパッケージされるか、どちらが変わるのかはわかりませんが、日本は他の国よりもパッケージする傾向があるので、案外Amazon Goは日本と相性がよいかもしれません。



買いたいモノが揃ったらあとは出るだけです。ゲートを通るだけです。改札機のように光や音がなったりするわけではないので、「本当にこれでいいの?」と思うくらい何もありません。そしてお店を出てから10分くらいした後に、スマホに支払の通知がきます。このタイムラグは微妙で、問題なく支払いができたか気になるのでもっと早くてもいいんじゃないかと思いつつ、このサービスが普及したら、いちいち支払明細は確認しなくなるので、こういうものなのかとも思いました。

さて、ここまでが直接的な体験ですが、ここにもう1つの要素を掛け合わせると面白い考察が見えてきます。

前に本で紹介した、アメリカのスーパーWHOLE FOODS MARKETは、2017年にAmazonに買収されて大きなニュースとなりました。WHOLE FOODS MARKETは有機野菜や環境により食品を取り扱ったりステークホルダーと対等な関係性を重視する会社ですが、一方でAmazonは徹底的な合理性が全面に出ている会社で、一般的な見方としては相性があまりよくないと思われています(実際に買収のニュースがあったときAmazonの株価は下落しました)。

Amazon Goのわりと近くにWHOLE FOODS MARKETの店舗があったのでそちらものぞいてきました。(ニューヨークでも見てきましたので合わせての感想ですが)店舗レイアウトは画一的な横並びではなく、コーナーを中心に構成されたアイランド型が多かったり、精肉・チーズ・鮮魚・パンなどは対面での構成がとても充実しています。



で、これとAmazon Goに何の関係があるかというと、実はAmaozn Goは支払を自動化する省力化だけを狙っていない可能性があります。それは何かというと、レジ業務がなくなれば対面での接客サービスがより注力できるようになる、といった可能性を秘めていることが考えられます。つまり目指しているのは効率化ではなくサービスの質の向上。そう考えると、なぜ大手の小売りチェーンでなくWHOLE FOODS  MARKETを買収したかが結び付くようになります。思想は真逆に見えそうな2社ですが、実はWHOLE FOODS  MARKETの本で、著者のCEOであるジョン・マッキーは、何度もAmazonのCEO・ジェフベゾスの言葉を引用しており意外に思いましたが、根本のところでは思想が一致しているのかもしれません。



ちなみにこの視点は僕が1人で考えたのではなく、人と話していたなかから見えてきた仮説ですが、こういった仮説が立てられると見方が大きく変わります。省力化だけの視点だったら、経営の効率化や人材不足の業界に展開する戦略が考えられるけど、サービスの質を向上させるため、という視点だったら、たとえば美容室、病院、保険など、少し違った視点で可能性を考えることができるようになります。この仮説が正しいかどうかはわかりませんが、戦略的な視点では新しいビジネスチャンスをつくることができる可能性があると思います。

もしそこまでを見据えていたとしたら、Amazonおそるべしです。ちなみにAmazon Goがあるこのエリア、再開発で建築ラッシュなのですが、ニョキニョキ立つ高い建物のほとんどはAmazonなのだそうです。40の建物を本社機能として集約している過程なのだとか。従業員何人いるんだろう、おそるべし。



今回はフィールドワーク先行でAmazonをリサーチしたので、次は本を読んで俯瞰的な視点でAmazonを理解したいと思います。
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