スタートアップはTech系だけじゃない:サンフランシスコのお店
公開日: 2018年2月23日金曜日 クリエイティブ デザイン ビジネス
サンフランシスコでの滞在は、新しいお店がどうやって(アメリカのみならず世界に)広がっていくのかというのを、今回の訪問で何となく肌で感じることができたような気がします。お店の人に写真OKかは聞いているうえであげているので、プライバシーや営業に影響ない範囲で公開します。b8ta
https://b8ta.com/
分類でいえば家電屋さん?なんですが、商品を購入して持ち帰る場所ではなく、商品を体験をしたり知ることを目的としている、という変わったお店です。(体験型ショールームといった感じですが、資場所貸しのビジネスモデルなんだろうか?)Food TechやSports Techなど、ありとあらゆる〇〇Techのデジタルの新しい商品がたくさんあります。昔は最新のものは日本が一番見られたかもですが、今ここにあるのは日本では見られないものばかりですね。下の写真は食事のアレルギーをチェックするモバイル機器。
家庭ロボットとして注目を集めていたJIBOも展示されていました。実物を見るのは始めてです。正直ハードのつくりは思ってたよりもですが、やっぱりこの動きは特徴的です。今までのロボットにはないコミュニケーションの可能性を感じさせます。
WARBY PARKER
https://www.warbyparker.com/
次にウィンドウショッピングで歩いている中でいくつかのお店に入りました。メッセンジャーバッグのtimbakやスーツケースのawayなど、西海岸から広がった店舗もありましたが、個人的に気になったのはメガネのWARBY PARKERです。
もとはネットでオーダーして試せるザッポス方式のメガネメーカーのようですが、サンフランシスコの華やかな通りに実店舗もかまえています。目から鱗だった気づきは、全身鏡があること。考えてみればメガネを試着するときは全身で確認したいですよね。あと商品の名前がおそらく地名に基づいたネーミングであるのも、ストーリーで商品を体験してもらうという考えがよく表れていると思いました。
Fellow
http://fellowproducts.com/
そして僕が一番グッと来たのが、コーヒーのグッズや豆などを取り扱うショップのFellowです。おおまかにくくると、コーヒーにこだわりを持つ人に向けたお店ですが、商品だけでなく体験を売るお店です。僕は一時期コーヒーに結構はまっていたので割と詳しいほうなのですが、カフェではなくグッズから展開する動きの会社は案外あまり多くありません。実はここに知り合いの人がいるので、色々と話を聞くことができました。
目に見えるのはショップですが、この会社はスタートアップです。創業は数年前とまだ新しく、いま社員は数名程度とのことですが、コーヒーポットをはじめとして様々なグッズがアメリカ国内外に展開されており、MoMAにも取り扱いされていました。
サードウェーブといわれる、エスプレッソ系からコーヒー豆のシングルオリジン(ブレンドをしないで1種類の豆の特徴を味わう)トレンドが数年前から日本でも広まっています。代表的なのはブルーボトルコーヒーですが、ちなみにブルーボトルもサンフランシスコ発祥です。サードウェーブの流れによってコーヒーの抽出方法もフレンチプレスや、日本がもともとやっていたドリップ(英語では pour over といいます)が再注目されるようになりました。ですが、コーヒー器具は昔から使われているものが多く(ドリップは日本メーカーががんばっています)カフェオーナーが工夫したり、ブルーボトルのような資本のある会社は自社で開発をしたりしているような状況でした。
そこでFellowのような商品群は、今のコーヒーにこだわりがある人に合ったものだといえます。例えばポットには温度計がついていたり(大事なんです)、もちろん注ぎ口は細かい調整ができる、ドリッパーやフィルターも独自の構造を持つなど、丁寧に考えられたつくりになっているうえ、見ての通りとてもキレイなデザインです。こういった商品がつくれるのは、この考えに投資をしてくれるベンチャーキャピタリストがいて、一流のデザインをつくれるデザイナーがたくさんいて、新しい挑戦をポジティブに捉えている人が多くいる、サンフランシスコという土地だからできることだといえるのかもしれません。
商品だけでなく、この店では様々なコーヒー豆を取り寄せて居たり、この店舗で抽出を体験することができます。コーヒーはワインのように嗜好品だけど、ワインと大きく違うのは、入れる人の手間やテクニックによってコーヒーは大きく味が変わるという点、クラフト的な要素が魅力ということです。コーヒー豆は産地・品種・生成方法・焙煎・抽出方法などによって、写真のように色々と違った味わいが楽しめます。なのでこの店では実際にコーヒーを抽出することが行えたり味の違いを感じたりなど、体験できることを重視した場になっています。これもファンを引き付ける大切な要素です。
西海岸のスタートアップというと、GoogleやFacebookなどの巨大企業からSquareやAirbnbなどの急成長の企業まで, テック系のビジネスが代表的なイメージですが、それだけではなく、Fellowのような会社もあるということを認識することができました。テック系であろうとなかろうと、新しい取組みの芽を育む環境がある(もちろん厳しい社会だと思いますが)というのが西海岸の強みなんだろうということが体感できました。その時に一番大事になるのは「その挑戦に対して賛同してくれるユーザーはいるか?」というUXを、いかにビジネスの価値につなげられるかが大切になります。そして、それができるのはデザイナーであり(スタートアップはそこに投資してデザインをお願いするので、それがつくれないプロの取組みの対価として示せない)さらに、そこに戦略的な視点を持って組み込めるかどうかが、スタートアップで1つ大切な要素になるかと改めて思いました。
もちろんテック系も盛んで、移動中にこんな車も見かけました。自動運転の実験?