「どう」おもしろいか+「なぜ」おもしろいか:ビジネスモデル図解制作委員会の説明会
公開日: 2018年3月4日日曜日 ソーシャル ビジネス マーケティング メソッド
2017年にある1つの記事が話題になりました。2017年後半に感動したビジネスモデルまとめ10個 #ビジネスモデル図解シリーズ (note)
https://note.mu/tck/n/n527f9f2244b4
次のユニコーン企業と評される、米国発のビジネスモデル図解4選(Forbes JAPAN)
https://forbesjapan.com/articles/detail/19168
それはビジネスモデルを図解するというものだったのですが、僕がこれを見て特にすごいなと思ったのは、
・古典のビジネスモデルではなく最新の事例を取り上げている
・ユーザー視点で価値が理解できるようになっている
という2つでした。これまでもビジネスモデルの本はたくさんありましたが、どちらかというとビジネス側の視点から分析されたものが多いので、仕組みはなるほどと思いつつも、デザインの領域とは少し距離が遠いと感じていました。でもこの図解で示されているものは、上の2つのようにユーザー起点でデジタルを活用した事例が説明されていたので、より自分事化して読むことができました。
そうしていたら、この記事を書いたチャーリーさんの説明会があるというのを見つけて「これは行かねば!」ということでお話しを聞きにいきました。図解した事例はすでにネット上にたくさん掲載されているので、この説明会では、
・なぜ図解するのか
・どうやって図解するのか
・いま活動していることの今後の進め方について
ということが主な内容でした。この説明会を聞いて、図解のうしろにある良いビジネスモデルとは何だろう?ということに気づくための目を持てたことが、個人的には一番の収穫でした。ここの感想文では主に、図解や事例についてではなく、ビジネスモデルをどうとらえるかについてを取り上げ、3つの視点を下にまとめてみました。
1.創造性があるか(Creative)
面白いと感じるビジネスモデルには、常識とは違うことをやっている『逆説』があるという構造の関係を見つけました。ある業界で常識であることに対して、これまでの常識をくつがえす価値をつくって、それを業界に組み合わせると今までになかった優位性ができている、それはこれまでにない新しいことなので面白いと感じる、ということです。例えば『俺のフレンチ』はフレンチなのに立ち食い(今は席がある店舗もある)で他より安価で美味しい食事を提供していたり、Cashはお金が先に入ってからモノを売れる、という点で逆説が際立っています。
これはなるほどと思いました。僕も面白いビジネスモデルを人に伝えるとき、特にデザイナーに対しては複雑に説明してもわかりにくいので、単純に違いは何か?に要点を絞っていたのですが、それではシンプルすぎて説得力が弱いなと感じていました。それが構造化されたものとして整理できていると、主観ではなく「すごい」が伝えられるようになります。この思考法、ビジネスモデルだけでなく何かを考えるときに参考にしたいです。
2.経済合理性があるか(Business)
創造性は主にユーザー視点で面白いに着目していますが、ビジネスモデルそれだけではなくて、ちゃんとビジネスとして成り立っていることまでが求められます。先ほどの『俺のフレンチ』の例でいえば、お客さんの回転率があがるから収益性に反映している、食品の廃棄ロスを減らしている、という点が経済合理性として両立しています。
この一見、相反する2つを組み合わせられるのは簡単なことではなく、でもそれができているから「このビジネスモデルおもしろい!」と感動するということです。
3.社会性を持っているか(Social)
上にあげた2つは加点要素の項目であるのに対して、この社会性はチェック機能として何か裏がある仕組みは減点要素として捉えるというものです。なぜこの社会性が3つ目に出てくるかというと、創造性と経済合理性が両立していても、社会的によいとは思えない企業やビジネスモデルは存在からです。
ビジネスモデルの本を読んでいると、確かにそういう事例がいくつか出てきます。例えば他社をつぶすだけことを目的としたビジネスモデルや、ユーザーやパートナーから搾取するようなビジネスモデルなど。こういった事例を本で見たとき、僕は「やっぱりビジネスの視点はデザインよりもリアルで厳しい世界だな」と思いながらも正直イヤな気持ちになりました。なぜなら自分のためのことばかりで、世の中のためにはなっているとはいえないからです。ビジネスとは本来、世の中に必要とされているから存続しているはずなので。
八方よしという言葉が紹介されていました(三方よしは知ってましたがこの言葉は知りませんでした)が、これはビジネスに関わるあらゆる人にとってよい状態をつくることを意味していて、前に紹介したWHOLE FOODS MARKETの考えに近いものがあると思います。この社会性を解明する仕組みはとても難しいのだそうですが(これができたらノーベル賞ものらしいです)、でもこの視点は本当に大事だと思います。
特にデザイン側からみてビジネスを考えるときは、常に「このビジネスはユーザーにとってうれしいものであるか?」を考える必要があるし、何かを創りだすは倫理観をもって取組むべきです。
ビジネスモデル図解はこういった背景に基づいて描かれています。図を見ることでそのビジネスモデルが『どう』すごいのかを知ることはできますが、一方で『なぜ』すごいのかを理解しなければテクニック的な視点でとどまってしまうので、Creative, Business, Socialの3つの位置づけから捉えるということがとても大切であると理解できました。
デザイン側からビジネスモデルをどう見るかについて、ずっとモヤモヤしていた自分の悩みを、構造化して明確に整理されていたので、よい気づきを得ることができました。本当にすごいなと感心しました。参加できてよかったです。