どんなときに図を使うとよいかがよくわかる:図で考える。シンプルになる。

公開日: 2018年7月28日土曜日 コミュニケーション メソッド

以前、monogotoの濱口さんが、左脳的な数字と右脳的な絵の中間にあたる図は、両方の要素がバランスよく最もクリエイティブに考えられる思考ツールだといっていましたが、あらためて考えてみると図の使い方をしっかりと教わったことのある人はほとんどいないのではないかと思います。理系だとプロセス図など、文系だと意思決定のディシジョンツリーなどの機会があるかもですが、デザイン教育では2x2を製品ポジショニング分析で何となく使っていたくらいの浸透度合いではないかと思います。



図で考える。シンプルになる。
櫻田潤
ダイヤモンド社 2017.10

僕にとっての図の使い方は、アイデアを創り出すするための用途だったり、既存の枠組みでは分類できない状態のものを整理することだったりするので、完成された図を使ったメソッドにはあまり興味がありません。そんな中で、この本は思考ツールとして図の使い方をフォーカスしているので、読んでみることにしました。

定番の図として7種類あります。

1.交換の図(矢印を使って関係性を示すもの)
2.ツリーの図(組織図とか階層化されているもの)
3.深堀りの図(原因と理由を整理したもの、ツリーと似ている)
4.比較の図(2x2で位置づけを示すもの)
5.段取りの図(プロセス図とかで使われるもの)
6.重なりの図(3つの丸が重なる、ベン図といわれるもの)
7.ピラミッドの図(マズローの5段階欲求とかで見られるもの)

全体的にはどれも見たこともあるし、たぶん説明用に使ったこともある図ですが、この場合にはこの図を使うのがよいということが体系的に整理されているのは助かります。例えば比較の図(2x2)は製品の位置づけを示すためなどでよく使われますが、この図を用いる前提としては「客観的に比較・検討するためのもの」ということが示されています。なので、軸には何かしらの根拠となる指標が必要とされますし(数字とは限らず、両端が対比の概念として位置づけられればOKだと思いますが、指標が対比になっていないことがよくあったりします)、あるいは比較対象がないならこの図を使う必要がないことが分かります。ちなみに僕は、よく2x2に対して数学で使われる縦軸と横軸のグラフ(L字型の)の違いを意識しないで使ってしまうことがありますが、L字のは左下が両方0である場合に使われるときに使う、という理解がいいのかなと自分なりに考えています。



図を使っていて個人的に意識することは、できる限りシンプルに要素をそぎ落として主体を際立たせることです。よく完璧に表現しようと考えて精緻に複雑な図を書く人がいますが(エンジニア系に多い?)、そうすると何を伝えたいかがわかりにくくなってしまいます。そもそも、図とは言葉や視覚的な描写を抽象的に置き換えた表現だと思っているので、何を伝えたいか、何を分かりやすくしたいかが主体としてあるべきだと僕は考えています。一方でそぎ落とし過ぎると誤解を招くこともあるので、レベル感は用途や人に応じて意識する必要はありますが。

ちなみに冒頭にあげた濱口さんの見解に基づく僕なりの解釈ですが、図と他の表現との位置づけについてはこのように考えています。図がデザイナーにとって大事だと思うのもこういった理由からです。ある意味で図は偏りがない一方で表現としては尖りきれない存在かもなのですが、両端の間をつなぐ役割としてはとても大切な存在だと思います。

・数字:誰が見ても同じ解釈=サイエンス
・図:法則性に基づく表現で解釈の範囲が示されている=デザイン
・絵や言葉:受け手の解釈次第で理解の仕方が大きく変わる=アート

あと、これは自分も含めてなのですが、その図が強引に拡大解釈した表現になっていないかを意識する必要もあると思っています。例えば2x2でも、軸の取り方がすごく主観的だったり、そもそも2軸だけで簡単に分けられるものでもない場合があったりして、他人のまとめ方を見たときに違和感を感じることがたまにあるからです。図は絵と違って共通認識で理解を得る左脳的な要素もあるので、クリエイティブのときに図を使う場合は主観と客観のバランスに気を付けるべきなのかなと思います。

本書では、見せ方や伝え方はあくまでテクニックであって、テーマを設定したり切り口を見つけるなどの思考の要素が大切であると述べています。冒頭の話にもどると、図は思考のためのツールとして使うことにより大きな価値があるはずなので、カッコよく見せるためではなく、中身を伝えるための図であることを忘れないようにしておきたいものです。
  • ?±??G???g???[?d????u?b?N?}?[?N???A