論理と感覚の間を行き交うフェルミ推定:地頭力を鍛える

公開日: 2018年7月31日火曜日 メソッド

地頭力という、頭突きが強そうなこのワードを数年前からネット上で目にするようになりました。これは知識や記憶力に基づく受験勉強だけではなく、考える頭の使い方を意味する言葉として使われているのだと思いますが、この本の中で地頭力を鍛えるためには、フェルミ推定の考えができるかどうかがカギとなるということで、僕は主題の地頭力より副題のフェルミ推定のほうに興味があってこの本を読んでみました。



地頭力を鍛える-問題解決に活かす「フェルミ推定」
細谷功
東洋経済新報社 2007.12

フェルミ推定とは、一見つかみどころのない物理量を論理的に推論し短時間で概算することといわれています。例えば「日本全国に電柱は何本ある?」という問いに対しておおまかなあたりの本数を導いていきます。この例の思考方法の1つとしては、まずはじめに市街地と郊外で分類して、市街地なら1kmx1kmのエリアに対して何本くらいあるか、郊外なら何本くらいあるか、それを日本全国の面積だとどのくらいになるか、と推論していくアプローチです。コンサル企業の就職試験でよく出てくる問題のようです。(僕は経験ありませんが)

そして、このフェルミ推定を行ううえでは3つの思考が大事になるということです。

1.仮説思考(結論から考える)

フェルミ推定を行うときは不確かさを許容することが不可欠です。なので、この情報がそろってないとできないと思うのではなく、ある材料(制約や条件)のなかで解を探っていくことになります。そこで大事なのは、ゴールを最初にイメージしてそこから逆算して手段や落としどころを考えること、仮説を持ちつつも始めの仮説にはこだわりすぎず(思い込みを排除する)常に考えをアップデートするのがポイントということです。これはデザインの取組みにも通じるところがあり(デザインに正解はないから)感覚的にはわかりますが、一方でデザイナーは思い込みが強いところもあるので、柔軟性を意識しておくべきだと思いました。


2.フレームワーク思考

これは簡単に言うと、全体と部分の位置づけを常に意識しておくことを意味しています。考えが一か所に偏り過ぎているときは引いて考えて抜けている箇所を見つけるなどが当てはまります。代表的なのはMECE(モレなくダブりなく)の考え方や2x2のマップで整理する方法です。このプロセス自体はとても客観的で論理的なものですが、面白いと思ったのが、軸などの切り口をどうもってくるかはアートの領域であるということで、この思考は決してロジカルだけではないそうです。確かに僕自身も軸を設定するときの多くは直感です。その直感の多くは経験に基づくものなので論理的に導かれるものではないので、そういった面も必要なんだなと思います。


3.抽象思考

枝葉を切り捨てて単純化してものごとを考えられるかを意味しています。上の電柱の例でいうと、いろんな諸条件があるけどその中から、電柱が配置されているのは大きく市街と郊外の2つに分類できる、という捉え方ができるかどうかということになります。ですが単に抽象化するだけでなく、抽象化と具体化の両方をつないで考えられるかがポイントで、この思考が得意な人はアナロジー(たとえ話)が上手だったり、どんなテーマでも30秒で説明ができることが挙げられます。

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というようにフェルミ推定に必要な思考3つが紹介されていましたが、共通していえるのは、どの思考でもアート(感覚的)とサイエンス(論理的)の両方を行ったり来たりできることが重要だという点です。アート(感覚的)だけのアプローチだど経験や直感だけで数をあてることになるので根拠や信頼に乏しい、一方でサイエンス(論理的)だけだと新しい物事に対する推察が行えない、という状況になるので、この2つを両立させられるかがフェルミ推定において実は一番大事ではないかと思いました。



これをこのブログのテーマに結び付けて考えると、デザイン(感覚的)とビジネス(論理的)の間をつなぐためにデザイン・ストラテジーが必要であると考えているので、そのためにデザイン・ストラテジストがフェルミ推定のスキルを身に着けておくことは、思考トレーニングのうえでも重要なことではないかと考えます。実際、新しいビジネス企画を立てるときには、まだ存在しないニーズやサービスに対してどのくらいの売上が見込めるか?ということをフェルミ推定のアプローチで考えていく必要があります。

僕はコンサル出身ではないからフェルミ推定を用いた経験自体は少ないのですが、機会を見てトレーニングしていくことから始めていきたいと思います。そうするといつの間にか地頭力も高まっていくのでしょうか?わかりませんが。ここではあまり触れませんでしたが地頭力・知識記憶力・対人感性力の整理もなかなか面白かったので、上のメモを見てもらえればと思います。
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