まるで外食のユニクロ:サイゼリヤの本2冊

公開日: 2018年8月24日金曜日 ビジネス

僕にとってのサードプレイスはスタバではなくてサイゼリヤです。そのくらいサイゼリヤが好きです。サイゼリヤについてだったら1時間くらい語れる自信があります。このブログも何割かはサイゼリヤで書いていたりしてますが、1人で行くことがほとんどで、たまに家族とも行きます。

といっても昔から好きだったわけではないです。お店の存在を知ったのは2000年頃だけど、はじめてお店に入ったのはそれから数年後で、意識していくようになったのはたぶん5年前くらいからです。キッカケは何だったか忘れたのだけど、あるとき「何でこんなに安いんだろう?」とか「他のファミレスと違っていて独自路線をつらぬいているのが面白い」と思うようになり、好奇心からネットの情報を探したり本を読んだりして、その秘密を探ろうとしました。そして結果的により好きになって今に至ります。

ここで紹介する2冊はその秘密が凝縮されているものです。(ちなみにこの2冊、どういうわけか発売日がわずか1カ月違いで似たような内容、何か大人の事情があったのかと気になります)



おいしいから売れているのではない、売れているのがおいしい料理だ
サイゼリヤ創業者 正垣泰彦
日経BP社 2011.07

サイゼリヤ革命
山口芳夫
柴田書店 2011.08

サイゼリヤが生まれたのは1973年(名前はちがったけど)でファミレスの中ではかなり古くからある会社です。といっても始めからファミレス的な業態からスタートしたわけではなく、改良や工夫を重ねていったらいつの間にかこうなっていたという沿革のようです。僕が実際に利用して強く感じることは、ファミレスという業態や他の競合を意識している感じがまったくしない、独自路線を追求しているということです。他と比べずに安くできるならするという価格設定、実はイタリア料理に強くこだわっていてなんでもありのファミレスではなく、イタリアンを追求しているところなど。

話がそれますが、居酒屋や定食屋に行くときチェーン店をなるべく避ける人は少なくないと思います。それはどこかコストやクオリティコントロールがマネジメントされたビジネス的な匂いを感じてしまうからではないでしょうか。サイゼリヤはチェーン店ではありますが、よそを気にしながらの空気感を感じさせないところがあるのが、僕が気に入ってる理由かもです。相対評価の視点ではなく、徹底したお客さん視点だと思います。

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本題に戻るとサイゼリヤの秘密は次の2つに集約することができると思います。それは

・なぜこんなに安いのか
・なぜ結構おいしいのか

ということです。2つそれぞれについて解説していきます。



なぜこんなに安いのか

ミラノドリア299円、マルゲリータ399円、グラスワイン100円、サラミ299円、とにかく安いんです。僕が行くサイゼリヤの近くにはマクドナルドもあるのですが、がっつり食べるのでなければサイゼリヤの方がリーズナブルだし、割とゆったりと落ち着いて座ることができます。ちなみにサイゼリヤのメニューは基本、セットではなく単体になっていて、これはイタリア料理のように組合せで楽しんでもらいたいという考えに基づいているそうです。こういったのも独自路線を貫いているなと感じる点です。

で、その安さの秘訣は『コストカット』にあるようです。コストカットというと、どこかにしわ寄せがあるネガティブな印象が強いですが、サイゼリヤのコストカットは徹底した効率化にあります。例えば、メニューは目玉商品(ミラノドリアとか)をつくる代わりに品数はなるべく減らす、そうすると食材ロスが減って作業効率も良くなる、そうすると利益が出てくる、出てくる利益はお客様に還元すべきだから値段を下げる、ますます人気になる、という循環。この考えすごいです。何がすごいかというと、ここには競合とかの視点は一切なく、すべてお客様とお店の関係だけでよい循環を生み出す考えをもっているところ。ユーザー視点を徹底できているといえます。

コストカットは人件費を節約するという発想にも向かわず、最小の動きだけで掃除ができる専用のモップ(ターンが少なくてよい、モップから水が出てくるオリジナル商品なのだとか)によって掃除の時間を60分から30分に減らしたり、包丁を使わない調理やキッチリ一杯分の量がすくえるお玉の開発など、あくまでもパフォーマンスを最大化させるためにコストカットを追求しています。書類と数値だけ見ていると、この企画・戦略の発想は出てきません。創業者自身が長く現場で実践していたこともあると思いますが、現場起点で合理的な考えを持てるこの会社はすごいと思います。


なぜ結構おいしいのか

こんなに安いのに味に対する評価は悪くはなく、イタリア料理家の評価もなかなかのようです。そこにはもう1つ、美味しさと安さを両立させるための秘密があります。それは『食材にはこだわる』ということです。調理では効率化を取り入れる一方で食材には価格ではなく品質を追求する、という点がこの会社のまた面白いところです。

サイゼリヤの原価率は40%近くとチェーン店の中ではかなり高い方で、一般的にコストカットというとまずは原価率を下げる方に目が行きがちです。ところがサイゼリヤはここには出費を惜しみません。なぜなら創業者の考えに「料理の味の良し悪しは80%が食材で決まる」と考えているからです。なるほど、そういえばイタリア料理の考え方も、鮮度や素材そのものの味を活かすことを大事にした料理であったかと思います。生ハムやチーズに調理加工はほとんどないし。

サイゼリヤは品質を信頼した一社と直接契約をしており、特にチーズや生ハムなどはイタリアから仕入れています。なのでイタリア本場の味が日本のファミレスで味わえるという感動があります。そして米や野菜などは自社で畑を持っています。これもすごくて、畑を耕す農機から種や苗までを自社で開発していて、効率性と品質にこだわった経営を農業でもやっています。もはや外食ビジネスの域を超えてますが、目指しているのは外食のSPAだそうです。なので例えるなら、ユニクロのファミレス版というのが一番しっくりくるのかもしれません。

ちなみにサイゼリヤは創業者が理系出身であり社員にも理系出身の人が多い様で、品質評価や効率化のための商品開発などを科学的に取組む研究部門があるようです。なのでサイゼリヤは外食産業なのに、実は思考も取組みもかなり理系な会社なようです。そこが戦略的であると思いながらユーザー視点を徹底しているところに、学ぶべきことが多くあります。


最近、このブログに加えて、世の中のビジネスモデルを図解する活動にメンバーとして参加しているのですが、その中でサイゼリヤも図解しましたので、ここに紹介させてもらいます。安いとうまいを両立させる仕組みを図解したビジネスモデルを表していますが、こうやって紐解いていくことで、ユーザー視点での「面白い」の発見と、ビジネス視点での「なるほど」の発見と、両方から捉えていけるようになるかと思うので、今後、関係していく図解もここで紹介していきたいと考えています。

ビジネスモデル図解に関する記事はこちら。
https://note.mu/tck/m/m6efbe0f8e287
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