ボトルネックを見つける目を持つ:ザ・ゴール(コミック版)

公開日: 2018年9月26日水曜日 ビジネス メソッド

マンガシリーズが続きますが、ビジネス書の内容をマンガで学ぶ系の本を今回はとりあげます。「マンガでわかる〇〇」シリーズは、難しいと感じる(あるいはそれほど強く興味がない)内容に対して、読んでいますが、深いところまでの理解にはなれなかったり、大切なところは文章で説明されている(そこをマンガにしてほしい!)内容が多い印象を受けます。

そんな中でもこの本は、かなり評価が高く、かつ理論は難しそうなので、これはマンガから入って読むのはいいかもと思いました。原書は1984年と30年以上も前でもちろん分厚いので、それを正直このコミック版一冊で熟知できるものではありませんが、それでも基礎となる考え方についてを、ストーリーでまとめられているので、確かにこれはよく考えられたマンガだなと思いました。



ザ・ゴール(コミック版)
エリヤル・ゴールドラット、ジェフ・コックス(原作)
岸良裕司(監修)、青木健生(脚色)、蒼田山(漫画)
ダイヤモンド社 2014.12

この本は、制約理論(Theory of Constraints)に関する本です。ここでいう制約とは『ボトルネック』のことを指します。会話の中でもよく「~がボトルネックになっている」という表現がよく使われますが、それはこの理論から生み出された言葉です。(それ以前に使われていたか自信ありませんが)このボトルネックを見つけて対応を行えば問題の解決につながる、というのがこの理論の主旨です。

このボトルネックというのが何かについてを、本書ではある工場を舞台に丁寧に説明されています。納期や生産性に対する厳しい要求を押し付けられた工場長が留学時代の恩師にばったりと出会い、この制約理論の考えを問いかけのカタチで考えさせられながら、改善策を施していき工場を立て直すというストーリーです。

工場のように工程同士がつながりあう仕事では、前後工程の遅れが全体への生産性に影響します。例えばある工程の処理速度が遅いと後工程がどんなに効率的でも意味がなかったり、逆に前工程が極端に処理速度が速すぎると次に流せないので結果として在庫を抱えてしまい負債がたまります。そこで、一番ネックとなるボトルネックを見つけ出して、その工程の生産力をあげたり工程を組みかえたり、ボトルネックに合わせて全体の生産スピードを調整したりすることで、全体の生産性をあげるのが、この考えになります。

こう書いてしまうと当たり前のように思えますが、現場では個々の事象ごとに捉えて考えたり、目に見える印象で評価しまいがちになり、なかなかこういったことには目を向けることが難しくなります。例えば企画や開発のプロジェクトでは、一番進んでいることが興味深く見えてしまうので、それに注力しがちになり、一方でボトルネックにどう合わせるかという考えはあまりしない、という状況はよくあると思います。

このマンガでは、一見非合理に見えるようなことが解決策につながる話がありました。例えば要のボトルネックの工程の前にも検品を入れると(普通は出荷前の最後に行うのが常識)、事前に不良品を排除できるとその後の無駄な作業が減ったり、おんぼろな機械でも入れた方がボトルネックの解消に貢献するならリソースをそっちにあてるという考えです。これはこの制約理論を深いところで理解していないとできる考えではないので、なるほどと思いました。



本書は30年以上の前のもので、主に工場などの生産現場に展開される理論で、かつトヨタのカイゼンも行きつくところは近い(常に見える化して問題を見つけられるようにして現場視点で改善を重ねていく)ので、イノベーションをつくり出すことが注目になっている現在においては、少し20世紀的な思考の印象はあります。

それでも何か関係性の中で取り組むときには、こういった現象は常に起こることなので、普遍的な法則であるともいえるので、この理論を知っておくことは特にファシリテートやマネジメントする視点では大切だと思います。加えて一見合理的に見えるような現象を注意深く捉えると、実は隠れた問題があったり弱点があったりする、というのを見つけることができる視点を持てることは、より大切だと思いました。

ストラテジーを考えるうえで学びとなる内容でした。それをマンガ一冊でここまで理解できるようになれるのだから素晴らしい。よく考えられた脚本とストーリーだと思います。(唯一、妻(母親)の描かれ方はいまの時代からすると「う~ん」と気になるところはありますが)
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