ニーズとシーズは表裏一体:世界をつくった6つの革命の物語

公開日: 2018年10月30日火曜日 テクノロジー マーケティング

この本はtwitterの誰かのコメントで気になって手にとった本です。店頭に並んでいる中から気になる本が見つかることはありますが、僕はたいてい誰かがおすすめしていたり記事の中で紹介された中から、気になって読むことがほとんどです。何かちょっとでも事前にインプットがあると読む意欲が大きく変わります。そうでないと技術に割と弱い僕はこの手の本をあまり読まないので。



世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史
スティーブン・ジョンソン
朝日新聞出版 2016.08

この本はなかなか壮大な物事の捉え方をしています。ここで取り上げている6つの技術が、いかに強い影響力を与えて世の中を変えているか、ということを技術の進展と歴史を合わせて紹介しています。

例えばガラスの技術進化は、鏡が自画像を生み出して(1400年代)、望遠鏡が天動説につながり(1600年代)カメラレンズが写真や映画をつくり(1800年代)、グラスファイバーがネットを生み出して(1991年)、今ではスマホで写真をとりSNSにアップして配信するということのすべてがガラスの技術に支えられている、という捉え方。...確かにすごい。

他にも、冷たさは氷から始まりエアコンがうまれて世界の居住エリアが変わったり、時間はタイムカードという労働管理の概念から人工衛星とGPSにつながる、といったようなすごい進化をとげていることが、歴史を通じて捉えなおしてみることで、そのスケールの大きさに気づかされます。

僕が面白いなと思ったのは、この本で紹介している6つの技術はいずれも人間の感覚に基づいているものが多く、人の欲求や探求心が発展につながっているのではないかという点です。それぞれの技術を行為に置き換えてみると、次のようになります。

・ガラス:見る、映す、光を通す
・冷たさ:快適さを保つ、保存する
・音:聞こえる、音をつくる、見えないものを感知する
・清潔:清潔にする、取り除く
・時間:測る、特定する、合わせる
・光:暗がりでも見えるようにする、目立たせる、読み取る

この行為や欲求は人や社会が潜在的に求めていることであり、ビジネスチャンスとしての可能性を多く秘めているともいえます。快適な温度でありたいことが、映画館の普及につながったり熱帯地帯での生活を可能にする市場をつくったということに発展しています。



僕は前職で医療機器の会社にいたのですが、医療機器の発展と治療技術の進化は切っても切れない関係であり(例えばレントゲンの進化によって性格な診断と治療ができるようになった)、このニーズとシーズの結びつきの大切さは実感できるところが強くあります。

いまだったら他に何があるでしょうか。特にデジタルテクノロジーは21世紀に入ってめまぐるしく日々進歩しているので、イノベーションにテクノロジーは欠かせないといわれますが、一方でそれはあくまで手段にすぎないので、テクノロジーありきで考えるのはよくないという意見もあります。

この本を読んで思ったことは、上の2つの意見はどちらも片方では不十分ではないかということです。大切なのは人や社会の潜在的な欲求(欲望もあれば社会的な倫理観とかもある)と技術とどう関連して進化や普及をしているか、というつながりに着目することが大切ではないかと考えるようになりました。いい気づきを与えてくれた本でした。とはいえ、6つの例の大きなスケール感をもって物事が捉えられるかといわれれば、そんなすぐにできるものではないと思いますが。
  • ?±??G???g???[?d????u?b?N?}?[?N???A