つながり→シェア→信頼のながれ:TRUST

公開日: 2018年11月26日月曜日 ソーシャル テクノロジー ビジネス

ここ最近のビジネストレンドワードである、ブロックチェーン・分散化・信頼...。数年前までの1つの強い影響力を持つ言葉が『シェア』であれば、次に注目されるのは、この『信頼=トラスト』になってくるでしょう。そしてこの2つの言葉は同じ著者から本が出ています。

前作のSHAREが日本で出版されたのは2010年の末(原題は『What's mine is Yours』※YoursのYを除いたoursが黄色の文字で、あなたのものであり私たちのものという意味が含まれている?)で、まだUberやairbnbの存在があまり知られてなかったその当時、日本で体感的にこの概念を理解できていた人は少数だったと思いますが、いまはこの通り。

今回のTRUSTは2018年の出版ですが、これが実感に変わってくるのは何年後でしょうか。ちなみに原題は『WHO CAN YOU TRUST?』で副題は『How Technology Brought Us Together and Why It Might Drive Us Apart』で、直訳的な日本語だと『あなたは誰を信頼できる?~どうテクノロジーが私たちを一緒にして、なぜテクノロジーは私たちを分断させるかもしれないのか』という感じでしょうか?(訳むずかしい...意図が違っていたらごめんなさい)よりテクノロジーにフォーカスしていることが読み取れます。



TRUST 世界最先端の企業はいかに<信頼>を攻略したか
レイチェル・ボッツマン(著)、関美和(訳)
日経BP社 2018.07

まず信頼のプロセスを昔から追っていくと、大きく3つのステップで整理されます。

1.ローカルな信頼(権力社会ができる昔の集落文化)
2.制度への信頼(中世から現代にいたる権力と統治の社会)
3.分散された信頼(これから表れ始めるかもしれない社会)

こう考えると、今は2と3の間の1000年単位の転換期にいるかもしれないといえるかもしれません。この変化を極端に捉えると、中央政府や権力構造がこれからなくなるかもしれないということなので。そして、こういった変化への兆候としては、シェアリングサービスが普及し、それにともなうレビューやレーティングなどが新たな評価指標として定着化されたことが大きく影響しています。

・・・

新しい信頼とは、分散された信頼のことを指します。本書ではアリババの発展やパナマ文書を例に、信頼の捉え方が変わってきていることを紹介しています。自身の体験にあてはめると、東日本大震災の原発に関する情報に対して「誰の発言やどこの情報が本当に信用できるのか?」ということが信頼の前提を考え直すキッカケになりました。情報の民主化という考え方に関して、信頼は強く関係します。近い境遇の人の情報に高い共感を持ちつつも、一方でそれが正しいという保障は必ずしもないので。

また、この新しい信頼はまだ確立したものではないので、楽観論だけではなく、使い方を間違えると怖い未来にもなりかねません。例えば評価者のスコア付けの仕組みは安心の担保を示す一方で、評価者の低いユーザーに対する格差を助長したり、そこで生まれる闇取引などを生みかねない、ということへの警告も述べています。いま世界で最もこの取組みが進んでいるのが中国で、ソーシャルレーティングが暮らしにどう影響を与えていくのか、注意深く動向を見ていく必要があります。



このような信頼社会の中でポイントとなる点を3つあげています。

・新しいアイデアへの信頼:人はなじみのあるものから信頼する傾向がある
・プラットフォームへの信頼:責任やケアに対する姿勢が強く問われる
・他人とボットへの信頼:数値化のスコアだけでなく直感も必要となってくる

すでにこの新しい信頼に基づいて生まれているサービスもいくつか紹介されていますが、僕の中ではまだ理解するためには時間が必要です(数年かかるかもしれない)。

ただ、この信頼を構築するためにはデジタルテクノロジーが不可欠となっており、次のビジネスを考えるうえではテクノロジーをどう使うかということを、思想的なレイヤーから考えていく必要があるといえます。

これまでは効率化のために使われていたテクノロジーが、これからは信頼のために使われる、という視点で捉え直したとき、いままでと全く違った使い方や価値が見つかるかもしれません。本書の副題にテクノロジーという言葉が入っていた意味は、こんなところにあるのではないかと、まだ理解が足りていないなりに考えてみました。
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