通貨 < 信用 になるお金の価値:新しい時代のお金の教科書

公開日: 2018年11月27日火曜日 ソーシャル ビジネス リサーチ

モノを所有しないでシェアするライフスタイルや、ビットコインなどの仮想通貨が使われるようになってから、お金に対する考え方が変わってきているのを感じることが多くなりました。それに合わせるようなながれで、お金に対する本がこの1年くらいで増えてきています。中でも特に世間では『お金2.0」という本が人気のようですが、僕は知人の勧めでまずこちらの本を読んでみることにしました。(特にこだわりがあるわけではないです)



新しい時代のお金の教科書
山口揚平
筑摩書房 2017.12

新書シリーズなので、全体で200ページもなく小さいため読みやすいのですが、中身はとても充実しています。分かりやすく整理された構成なのですが、言葉の意味がとても深く論理的な視点だけでは十分に理解できるものではないので「この説明文の本質はどういう意味なんだろう?」ということを考え、何回も読み返しました。そのくらい自分の既成概念を壊していかないといけないので、とても読み応えがある本だと思います。

内容もさることながら構成が分かりやすかったので、著者の他の本を3~4冊読んでみましたが、どれもとても構造的に書かれていています。このタイプは、コンサルタントとか新サービスをつくる人に多い傾向があって(自分調べ)、はじめにそれを頭に入れて読むと理解度が高まります。ここ数年でいろんなジャンルの本を読んだので、いずれスタイル別の読み方攻略もまとめられたらと思っています。

構成ですが、大きくは4つに分かれています。

1.お金の起源と定義
2.お金の正体
3.お金の変化
4.お金の未来

過去→現在→未来のながれで、はじめにしっかりベースの認識を合わせて、そこから何が変わってくるかというのを段階的に説明されているので、理解の積み上げがしっかりできます。加えて各章ごとの最後にまとめが書かれているので要点をしっかり押さえた読み方ができます。

内容についても簡単にまとめてみます(詳しく知りたい方はぜひ読んでみてください)
はじめに、お金の元々のルーツは『物々交換でなくて記帳だった』という興味深い点をあげています。記帳することによって交換の妥当性に加えて、信用にもつながっています。いま注目を集めているブロックチェーンは『分散記帳のシステムによって信用の情報革命を起こす』といわれていますが、大昔のルーツに回帰している(本質に立ち返っている)ともいえます。

この信用が21世紀のお金を考えるときのキーファクターになります。例えばモノへの所有欲が弱まった代わりにシェアの文化が浸透してきています。このシェアサービスをするうえで信用はとても大切になってきます。提供側は評価が低いとサービスを利用できません(Uberのドライバー評価とか)が、この信用はお金(通貨)で買うことはできません。つまりどんなに資産を持っていたとしても、その人自身に信用がなかったら21世紀では交換や取引をすることが難しくなります。

シェアしあう社会がより広がったり、仮想通貨のような中央集権ではないシステムが広がると、いずれは通貨を介さず、信用と信用のやりとりになる経済になることが考えられる。なので、これからのお金では、通貨よりも信用を高めることに重きを置こうというのが、本書を通しての大きなメッセージになります。だいぶ乱暴にまとめてしまってる点あるので、メモのほうでもう少し具体的な内容が見えてくるかと思います。



この本から僕が学んだことは2つあります。1つは、ユーザーの価値観がモノからコトへ移ったことが経済とどのような関係があるか、ということをある面から理解できたことです。そしてもう1つは、ものごとや言葉の定義を根本から見直して、大局的な変化を見つけるという、分析と考察のプロセスです。お金は大きなテーマですが、いま世の中の多くの概念が変わって生きているのでは?と感じることは多くあると思います。例えばニュースとか健康とか住まいとか。

新しいサービスを切り開いていくためには、こういった視点を持つことの重要さを認識することができました。僕は製品やサービスに対してストラテジーを組み立てていくことを仕事にしていますが、目先に見えることよりも、人々や社会にとっての根本的な価値は何か?ということを考えていくほうが、より変化に強くブレないストラテジーができるので、本書のような考え方と思考プロセス(本の構成についても)がとても参考になりました。
  • ?±??G???g???[?d????u?b?N?}?[?N???A