ある程度予測する大切さ:未来予測の技法

公開日: 2018年11月30日金曜日 マーケティング メソッド リサーチ

これまで僕は「未来は予測できないもの」というスタンスをとっていましたが、この本を読んで考え方が変わりました。180度すべて変わったわけではなく、未来を完全に予測することは不可能という考えは変わっていませんが、「こういう方向に行く確率が高い」というある程度の見込みを立てることは、リサーチスキルによって可能になる、ということをこの本から学びました。




未来予測の技法
佐藤航陽
ディスカヴァー・トウェンティワン 2018.02

著者の佐藤さんはメタップスの代表であり、学生から起業家として活動してきており、ネット上ではよくお名前を見ることがあります。最近だと「お金2.0」の本が話題になってます(まだ読んでないけど)。そのような自ら新しい市場を切り開いてきた本人が、世の中をどう捉えて時代に適したサービスを提供してきたかということを知りうかがえる内容であります。

予測に必要なものは3つあります。それは

・原理:何かしら必要性によって誕生した背景を知ること
・パターン:歴史は繰り返す、その共通の法則性を見つけること
・タイミング:それがいつ来るのかを見極めること

ということです。これを一言でまとめると「適切なときに適切な場にいること」が未来を予測し、新しいサービスを提供できる人が持っている能力です。この3つを1つづつ、もう少し丁寧に掘り下げてみたいと思います。

原理は、表層的な事象だけを捉えてはいけないことを意味しています。何か流行や機運が高まるときには、ただのトレンドとかたずけるのではなく、それが起こった背景と必然性を見つけることが大切です。例えばシェアリングの流行は、モノの飽和市場や、若者の経済的事情とか、モノよりも人とのつながりが重要になってきていることとか、起こるべくして起こる理由がそこにはあります。これを分析できるようになるためには、日ごろから社会の動きを感じ取るアンテナを張っておき、幅広い領域に興味を持ったり、マクロとミクロの視点でものごとを捉える視点を備えることが大切だと考えます。

つぎのパターンに関しては本書ではページ数をさいて、9つの法則を紹介しています。例えば②のあらゆるものに知性が宿る、という考え方は、手書きが自動変換に、電話がスマートフォンに、車が自動運転に、といったような事象に当てはまります。そうした法則性を自分の中で持っておき、何か新しい変化が起こり始めたときに、それは何の法則性に当てはまるかが見つかれば、その先に起こることが見えてくるということです。この習得はなかなか難しそうですが、1つの方法としては歴史や過去の事象を学習することが考えられます。

タイミングについては意外と見落としされがちです。たとえそれが予測できたとしても、いつかを見誤ってしまうと社会には受け入れられないので、早すぎてもダメ、遅すぎてもダメです。早すぎて失敗した日本企業の取組みはたくさんありますが、やっぱり改めて思い返すとiPhoneが始めに登場してから徐々に進化していった過程はタイミングをよく捉えていると感心させられます。このタイミングを見極めるためには、リソースを見極めることだといいます。技術がブレイクスルーするのはいつか、価格が民間レベルになるのはいつかといったことです。



といったようなスキルを身に着けることによって、未来の方向性を予測することは十分にできるようになります。考えてみれば、もともと僕がテーマに掲げているデザインストラテジーも、この先の変化を見極めて適切な製品やサービスの方向性をつくることを目的としているので、未来を予測することは常に考えていたような気がします。予測できる/できないと白黒つけるのではなく、ある程度予測できる範囲と、断定できない範囲を見極める整理ができることが大事だと思うようになりました。

この本は内容もさることながら考え方や視座の高さが、今まで読んできた本とは大きく違っていて衝撃を受けました。何となく、こういう考えを持つ人達が21世紀の社会を牽引していくんだろうな(自分は果たしてこういった考え方についていけるのか?)というような気がしました。
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