未来における希望と不安の両側面:Innovative City Forum 2018

公開日: 2018年10月25日木曜日 クリエイティブ ソーシャル ビジネス 建築

10月18日から3日間に六本木アカデミーヒルズで行われた「Innvative City Forum」に今年も(主に1日目だけ)参加しました。昨年の内容はこちら。同時間帯に複数のセッションプログラムが組まれているので、全部に参加することはできなかったですが、自分の興味で気になった3つのセッションを紹介します。




Innovative City Forum 2018 ← 公式ホームページはこちら


幸福の未来

テクノロジーの発展や世界的な社会動向を踏まえて、暮らしと幸せについて議論するセッションで、ベストとワーストの未来シナリオを描くことから話が展開されました。いくつか上がった中で印象深かったシナリオをそれぞれあげています。

希望的な捉え方としては、GenZ・ジェネレーションZといわれる2000年以降に生まれた世代の取組みへの期待。この世代は生まれたときからITを中心としたテクノロジーが身の回りにあり、環境問題への意識も前提として共通の価値観を持っており(世界全体の関心事として教育されてきた)、そしてお金よりも倫理観で動く人達です。

Me tooキャンペーンや銃の規制運動など、いつの時代も若者はこういった活動はしていましたが、大きな違いはGenZは力がある(テクノロジーを使って強い倫理観で人々の共感を集め働きかけられる)ことがだといいます。こういったムーブメントを僕とかの上の世代は軽視せず、自分たちにはない力であり(使い方を間違えると)脅威にもなることを理解しておく必要があるように思います。

悲観的な捉え方としては、バイオロジーの発展に伴う経済への影響、つまり命とお金が直接的に結び付くことへの危惧。今も既に経済が暮らしや幸せに大きく影響することは事実ですが、健康や長寿は主に本人の心がけや生活習慣によるものです。でもそれが遺伝子工学によって寿命を左右できたりすると、そこで新しい格差を生み出し、分断と憎しみを増やすことになりかねないといいます。

こういったシナリオを通してみるとテクノロジーに対する期待と不安が強く影響していることが見て取れます。そういった現代では、その前提となる思想や倫理観などがより大事となるのだと思います。


信用の未来

ブロックチェーンは信用の情報革命だといわれており、信用や信頼というキーワードがこれからの社会やビジネスで重要になるといわれています。TRUSTという本が今年出版され話題になっていますが(近いうちに感想文を書きます)ここにも期待と不安の要素が話から出てきたので2つ紹介します。

1つはGDPRというもの。General Data Protection Regulationの略で日本語だと一般データ保護規則、という21世紀の人権といわれる考え方が欧州から生まれています。

これは何かというと、GAFAなど21世紀に躍進した企業の多くは個人データとプライバシーを使ってビジネスを拡大してきた企業ですが、BREXITやアメリカ大統領選挙などがSNSによって影響を与えたり、個人情報の流出による新たな危険を生み出すことにもつながっています。そのデータは誰のものか、ということを考えると本来は私たち自身のもので、それらを保護する法律です。日本ではまだ海外に比べると危機意識が弱いということですが、データの重要性が高まるなかで、ウォッチしておきたい取組です。

もう1つは信用スコアに対する考え方です。知っている人も多いと思いますが、中国では既に信用スコアが一部で運用されていて、日本でも同様の動きが出てくるようになりました。これはお金に変わる新しい価値基準であると考えることもできます。(所得が低くても正しい行いをしている人は信用に足りる=お金を貸してもよいと判断できる等)

しかしその一方で次のような問題視もあります。

・差別の再生産(新しい格差や差別意識を生み出す)
・超監視社会(1984の様な世界)
・バーチャルスラム(信用のない人に対する闇サイトなどが生まれる)
・生まれながらの差別(親のスコアが低いと、社会地位をあげるのが難しくなる)

なかなか怖い世界です。個人的には信用が大切というのは共感するところですが、運用の仕組みによってはディストピアな世界を生み出しかねない考え方です。ここでもそうしたときに大事になるのは理念や思想であるということで、中国は共産主義がベースにあるから政府主導で行うことが強く影響するように、誰がこれを進めるのか(支配したいのか、金儲けしたいのか、本当にいい社会をつくりたいのか)が大きく変わってくるのだと思いました。


都市の未来

このフォーラムでは毎年、都市別ランキング調査というのを行っており、東京は毎回高い順位を持ちながらも、文化における評価が低いということです。このセッションの中の1人で、星のやの建築・インテリアデザインを手がけた人の話が面白かったのですが、星のや東京では、東京には日本なのに象徴的な旅館がない、ということに着目し、入り口で靴を脱ぐスタイルをつくったのだそうです。言われてみれば確かにそうかも。変に昔に回帰するのではなく、現代における文化の再定義という考え方はとても大切だなと思いました。




以上、気になったことをまとめてみました。あとメモはとっていなかったのですが、始めの写真で出ている基調講演の1人、ダーン・ローズガールデ(アーティスト)の活動はとても興味深いです。都市や交通をテーマとしてアートで表現していますが、単に自己表現としてではなく、その表現によって人とのつながりや、治安、環境問題への意識など、社会性の高いはたらきかけとなっている、スペキュラティブデザイン的な活動です。気になる人は下のサイトをチェックしてみてください。

https://www.studioroosegaarde.net/


今年もセッションの難易度が高度すぎて、理解が追いつかない内容が多かった(つまりここでまとめを書けなかった)のですが、いつかこの話が身に染みて分かるときがそのくち来ると思うので、分からないなりに頭の中に留めておいて、時流を捉える感覚を保ち続けておこうと思います。
  • ?±??G???g???[?d????u?b?N?}?[?N???A